がんという予期せぬライフイベントに直面した人が生活・就労を無理なく両立できる社会を目指している「一般社団法人がんと働く応援団」から、コラムの4回目が届きました!
がんの患者さんやサバイバーさんを病院内外で支えている専門家の方たちをご紹介するシリーズ。全4回シリーズの今回は最終回です。
第一回目「不安の対処の仕方」、第二回目「お子さんとの向き合い方」、そして第三回目は「相談支援センターのご紹介」をしてきました専門家の活用方法シリーズ。最後はお仕事とお金がテーマです。キャリアコンサルタントである「がんと働く応援団」の代表理事の吉田と、ファイナンシャルプランナーの芝原さんにお話を伺ってきました。
プロフィール
芝原有可子さん:ファイナンシャルプランナーの資格を持ち、現在も銀行の支店にてさまざまなお客さまのお金にまつわる相談業務を実施している。ご主人ががんサバイバー&国指定難病キャリア。
吉田ゆり:卵巣がんサバイバー。人事の経験を生かしてキャリアコンサルタントとして独立し生活仕事の相談業務を受ける。がんと働く応援団代表理事。
Q:芝原さんはご主人が、がんサバイバーなのですよね。
芝:そうですね。私たちには娘が2人います。ちょうど主人が倒れたときは、まさに上の娘が大学生、下の娘が高校生なるタイミングで、どちらもこれまでの生活の一番学費がかさむことが見えていた瞬間でした。
Q:どうのりきったのですか?
芝:実は治療費については、がん保険に入っていたことと、別の病気を併発し、それが国の難病指定疾患であったこともあり助成金を利用することで救われました。
ただ、一家の大黒柱が倒れてしまい、その上主人が個人事業主でしたので保障もなく、すぐに収入がゼロになってしまいとても厳しい状況でした。
当面の生活を考えたときの最大の問題は住宅ローンでした。
我が家の住宅ローンについては、三大疾病に対しての保障がついていない保険に加入していたので、「がん」と診断されても住宅ローンは引き続き支払わなければなりませんでした。
Q:三大疾病だと免除になる仕組みのローンがあるんですね。
芝:はい。現在の住宅ローンには収入保障との観点から、「がん」と診断されたら、以後の住宅ローンが免除になる保険が急速に普及しています。
それだけ「がん」という病気が増えていることがわかります。ですが、我が家はそのような収入保障保険ではありませんでした。
しかし当時、「金融円滑化法」というリーマンショック後に制定された法律を知っていたのでそれを活用しようと思い、ローンを組んでいた銀行に相談し、住宅ローンに適用され月々の支払額の減額や猶予を得られたことが大きかったです。
Q:吉田さんもお金についてのご相談を受けることが多いようですね。
吉:そうですね。キャリアや転職についてのご相談からはじまるのですが、やはりお金のことも重要なポイントになる事が多いです。保険、貯金、生活費を考えると、今のお仕事のお給料からいくら足りないのか?
たな卸しを一緒にやります。「足りないのはあと月5万円だね」とか「月15万円何とかしなきゃね!」ということもあります。
このたな卸しをしていない状態で、漠然とお金の不安が膨れてしまうと、仕事にも身が入らず悪循環におちいる方がいらっしゃいます。
Q:たな卸しですか。
芝:ご自身の収支の把握は重要です。
たな卸しといっても難しく考えず、緊急事態に備え最低限把握すべきことは、3つ。
①現在の生活費にいくらかかっているのか?
②現在のローン支払いがいくらあるのか?
③すぐに使える貯金がいくらなのか?
です。そうすれば
④もし収入がゼロになったらあと何か月生活できるのか?
が感覚として掴めると思います。
多くの方は住宅ローンなどを考えるとすぐに厳しい状況になるかもしれないと思う方もいるかもしれません。
その場合、できるだけすぐに行動する必要があります。
住宅ローンについては、借入れをしている金融機関で相談することが可能です。
治療費や生活費について難しいと思う場合は、がん相談支援センターや各地域の社会福祉協議会などをご活用いただくことが賢明だと思います。手続きが煩雑ではありますが、先ほどの私の例にありますように、何か活用できるものが見つかる可能性が十分ありますので諦めないことも肝心かと思います。
Q:当面の資金繰りも大事ですが、収入を考えると働き続けることも大事ですよね。治療と両立をする人は増えてきているのでしょうか
吉:そうですね。両立している方は確実に増えてきています。そして両立にこれから取り組もうとご相談に来る方には以下3つのポイントを説明しています。1や2はもちろん、3番目が継続就労を行う上で大事だと思っています。
Q:具体的にいうとどういうことになるのでしょうか?
吉:ご相談にのると、がんが見つかった事は悪いことや恥ずかしいことのように感じている方もいらっしゃいます。
しかし、それは違います。長い人生の中で起きる、様々な経験の一つという風にとらえ対応することが大事だと思っています。新たな特徴を持った自分を理解し、受け入れ、現状、働くうえで必要な配慮は何かを把握する。そうすると自然に1や2につながり、自ら行動に移す事が可能になる方が多いです。
Q:コミュニケーションできるようになるためには、まず自分自身の現在を受け入れるということですね。
吉:周りに病気に対する偏見や思い込みがある中で自ら声をあげるのは、かなり負担の強いことです。
しかし、一人でも職場の中で相談できる人が見つかれば、状況は違ってきます。さらに上司や人事に建設的に自身の出来る事、そのために必要な配慮等の話ができると周囲の見る目も変わってきます。中にはどうしても言いたくないため、治療日は生理休暇などを使い、なんとか治療を終えられた方もいます。すべて状況や事情によりますが、り患者の方自らが決断し行動した事で継続就労できているケースになります。私たちはその後押しをさせていただいています。
Q:最後にサバイバーの皆さんへのメッセージをお願いいたします。
吉:仕事のこともお金のこともご自身1人で思い悩むのは大変おつらいことだと思っています。
家族や友人だと身近すぎて話せないこともあります。
専門の相談員に話すことで、自分にとってより納得のいく解決策を見つけることができます。ぜひ、キャリアカウンセラーやファイナンシャルプランナーを皆さんの人生の伴走者として活用していただきたいです。
(がんと働く応援団では、ピアリングの会員の皆様向けに9月いっぱい個別カウンセリングを無料でお受付します♪1回/30分、オンライン(ZOOM使用)。ご希望の方はこちらから、「相談内容」に「ピアリング」と書いてお申し込みください。)
文:一般社団法人がんと働く応援団 野北まどか