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【コラム☆ピアリング】一人で悩まない、抱えない。専門家たちの活用方法「がん相談支援センター 〜患者としではなく自分らしくあるために~」 一般社団法人がんと働く応援団

がんという予期せぬライフイベントに直面した人が生活・就労を無理なく両立できる社会を目指している「一般社団法人がんと働く応援団」から、コラムの3回目が届きました!

がんの患者さんやサバイバーさんを病院内外で支えている専門家の方たちをご紹介するシリーズです。全4回シリーズの今回は3回目です。

がん相談支援センター 〜患者としではなく自分らしくあるために~

がん相談支援センターの存在はご存じの方も多いと思いますが、実際にご利用になられた方は意外に少ないのではないでしょうか。今回は、聖路加国際病院(以下、聖路加)のがん相談支援センターの橋本看護師から、具体的な相談内容・活動内容についてお話を伺いました。

Q:聖路加のがん相談支援センターについて

橋本さん(橋):がん相談支援センターは全国のがん診療連携拠点病院に設置されています。
研修を受けたがん専門相談員が対応しています。
施設によって、看護師やソーシャルワーカーの方が担当しています。
聖路加では2008年から設置されております。がん専門病院でははく総合病院ですのでがん以外のご相談も対応しています。また、医療連携室も兼務していますので、受診相談や自宅近隣のクリニックや医療機関との連携、治療後の相談の窓口にもなっています。

Q:どのような方がご相談に来られるのですか?

橋:本当に様々な方がいらっしゃいます。治療前、治療中の方だけでなく治療が終わってからいらっしゃる方もいます。また、聖路加の場合は相談件数の約半分が院外の方なんです。
相談内容は受診方法から治療の見通しについて、不安な気持ちのご相談、他の人はどう前に進んでいるのか、誰にどこまで伝えるべきか、生活への影響、経済的なことなどいろいろです。
内容によって医師はもちろん、ソーシャルワーカーが対応したり、栄養士、社労士、心理士など様々な専門スタッフの方におつなぎすることもあります。

Q:院外の方が半分もいらっしゃるのですね。具体的な相談事例を教えてください。

橋:例えば、クリニックで診断を受け、次までに病院を考えてきてくださいといわれたタイミングでのご相談はよくあります。そういうときは、病院選びのご相談にのることもあります。
また医師との診療の際には、ご自身が3か月後6か月後にどういったことを予定していたのかなど、治療と生活の見通しがつくようにそれを整理してお見せするようにアドバイスすることがあります。

Q:それは変わったアドバイスですね。どうしてですか?

橋:私自身、相談される方が、患者としてでなく自分らしくあっていただくために何ができるか、をいつも念頭にご相談をうけているのですが、実は医師たちも同様なんです。
「手術して病気を取り除くために体の一部を切り取ることはあるけど、その人の人生まで切り取ってしまうべきでない」と当院の医師がよく言います。
治療はその人の人生を豊かにするためのもの」という考え方を持っています。
ですから、その方が大切にしていることを理解したうえで治療計画を考えていけることは医師にとってもうれしいことなんですね。でも、患者さんは通常そういう医療に関すること以外のプライベートなことは医師に話してはいけないと思ってらっしゃると思うので、そっと背中を押す感じでお伝えしています。

Q:患者としてではなく自分らしくある、というのはとても大事なことですね。

橋:そうなんです。中には、再発をしないように運動もして食事も気をつけて甘いものも避けて、免疫力を最大にするために22時には就寝して同時に仕事もして、と病気を中心においた生活を頑張りすぎてしまう方もいらっしゃいます。
経過観察になって外来の頻度が3か月、6か月になったころに不安が大きくなってしまう方もすくなくありません。そういった方たちには、例えば栄養士の方に食事のバリエーションをお伝えいただいたり、心理士の方とお話いただいたり、サバイバーの方と意見交換していただいたりして、本当は好きだったことや、やりたかったことを思い出していただくようにしています。
そうやって自分らしさを取り戻していいただくお手伝いをしています。

Q:ほかに大事にされていることはありますか?

橋:そうですね。「知ることを知る」、つまり、様々な場面で治療や周りとの関係や生活の営みの中でたくさんの意思決定を自分がしなければいけないことがたくさんあります。
その人が自分らしい治療や人生を選択できるための情報支援、あとで「もし知っていれば」とできるだけ後悔しないように、適切な情報を時期に応じて知っておくべきことをお知らせすることも大切な相談支援センターの役割だと思っています。
何を知っていたらより安心していただけるのか考えながら、一般的な治療の話だけでなくいろいろな患者さんのケースをご紹介したりしながらお話をすることもあります。

Q:最後にがん患者の皆さんやサバイバーの皆さんへメッセージありますでしょうか?

橋:相談支援センターでお受けするお話は本当に幅広いので、きめつけず必要な時にお声掛けいただければと思います。がんになってしまったことは変えられないけれども、そのあとの生活や人生をよりよくすることのご支援ができればとてもうれしく思います。

橋本さん、お忙しい中どうもありがとうございました!

(橋本さんからは就労相談へのご対応についてもお伺いしています。こちらに載せきれなかった内容はこちら(がんと働く応援団HP)に掲載しています。)

 

文:一般社団法人がんと働く応援団 野北まどか 編集:ピアリング編集部

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