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【開催レポート】第29回ピアリング笑顔塾「がん治療後リンパ浮腫の診断と治療 ~むくみと上手に付き合うための知識を身につけよう~」

2月19日(日)、第29回ピアリング笑顔塾「がん治療後リンパ浮腫の診断と治療 ~むくみと上手に付き合うための知識を身につけよう~」を開催しました。

今回のテーマは「リンパ浮腫」。

乳がん、婦人科がんの手術を受けた方の中にはリンパ浮腫に悩む方も多いと思います。また、いつリンパ浮腫を発症してしまうのか…と気になっている方も多いのではないでしょうか。最近はLVA手術経験者とリンパ浮腫発症者が語り合う「リンパ浮腫仲間の集い」も開催され、ピアリング内でも常にホットな話題となっています。

リンパ浮腫とはどのような状態?

初期症状は?

予防法は?

浮腫になってしまった場合の治療法は?

講師に亀田総合病院リンパ浮腫センター長の林明辰先生をお招きし、リンパ浮腫について学びました。林先生はリンパ浮腫の診察・治療を年間1500件以上おこなっている、リンパ浮腫治療のスペシャリスト。リンパ浮腫手術におけるリンパ管イメージングの世界的第一人者で、超音波やOCT(Optical Coherence Tomography: 光干渉断層撮影)顕微鏡を利用し術前・術中にリンパ管の状態を診断する世界初の方法を確立されました。

第一部:林明辰先生によるご講演「がん治療後リンパ浮腫の診断と治療 ~むくみと上手に付き合うための知識を身につけよう~」

第一部では、リンパ浮腫予防について学びたい方および、リンパ浮腫患者さん約70名が参加し、「リンパ浮腫治療における課題」「リンパ浮腫の病態」「リンパ浮腫の早期診断」「リンパ浮腫の早期治療」「今、わたし達にできることとは?」の5つのトピックについて学びました。

リンパ浮腫ってどんな病気?何が原因?

リンパ浮腫はリンパ管からリンパ液が体内に漏れ、体内に溜まることによって生じます。初期段階ではリンパ液が漏れているだけですが、症状が進むと腕や足が太くなっていきます。太くなってしまった腕や足を見ることは辛いことですよね。
世界的に2億人以上の人がリンパ浮腫に罹患しているという報告もあるそうです。では、なぜリンパ浮腫になってしまうのでしょうか。

一番の原因はリンパ節郭清

がん治療の手術でリンパ節を郭清することがあります(乳がんの方は腋窩リンパ節、子宮がん・卵巣がん・泌尿器系のがん(男性の場合)の方は腹腔内、骨盤のリンパ節を郭清)。このリンパ節郭清がリンパ浮腫の一番の原因となっています。
わたし達の体中には多数のリンパ管が存在しています。四肢においては、手や足(下流)から体の中心(上流)に向かって、皮膚直下から始まる多数の細かいリンパ管が集まり集合リンパ管に合流し、リンパ節に流入します。リンパ節郭清、あるいは化学療法や放射線治療が原因となりリンパ管の狭窄や閉塞が起こると、リンパの流れが滞ってしまい、漏れたリンパ液が回収されずに皮膚の下に溜まってしまいます。さらには、リンパ液の貯留時間が長くなるにしたがって、その周囲に余分に脂肪が付いたり、組織の繊維化が起こり、腕や足が太くなっていきます。

リンパ節郭清・化学療法・放射線治療以外にも肥満による脂肪の蓄積もリンパ管の流れに影響を与え、リンパ浮腫を発症したり、リンパ浮腫が悪化したりすることもあります。

早期発見、早期治療が大切
リンパ浮腫で一番大切なのは、早い段階で見つけて、早い段階で治療をすること。
リンパ浮腫を発症している方は自身の症状に変化があることが多いです。一番の変化は腕や足が太くなることですが、太くなってしまった状態では、リンパ浮腫が進行していしまっていることが多いです。
太くなる前に何か兆候はないのでしょうか。
自覚症状としては痛み、こわばり、疲労感、重だるさ、皮膚のツッパリ感、しびれなどが現れます。このような主観的な症状がいくつかある場合、リンパ浮腫外来を受診し、検査を受けて欲しいと思います。
画像検査(超音波、ICGリンパ管造影、リンパ管シンチグラフィーなど)を受けることで、どこでリンパ管の流れが悪くなり漏出したリンパ液が貯留しているのかがわかります。
 
画像検査の大切さ
リンパ浮腫の治療のメインは手術をしない方法、つまり、保存療法・複合的理学療法です。圧迫やドレナージ、運動、食事、スキンケアなどにより症状を改善させます。
この保存方法に加え、必要に応じて外科治療もおこなっていきます。
これらの治療をするためにも、どこでリンパ管が漏れ貯留しているのか、そして、健康なリンパ管がどこにあるのかを知ることが重要です。
リンパドレナージでは漏れてしまったリンパ液の逃げ道(側副路)を作ります。初期に診断を受け、保存療法でしっかりとした逃げ道ができると症状は意外と悪くならなくて済むそうですよ。そのためにも、リンパ管の状態を知ることは大切ですね。
もちろん、手術で症状を改善させるためにも必要不可欠です。
 
保存療法?手術?
保存療法で対応できるケースは、リンパの回収量がリンパの漏出よりも多い場合です。
逆に、手術を考えなくてはいけないケースは、「保存療法を続けているが症状が改善されない、徐々に悪化している」「急速にボリューム増大が認められる」「リンパ管造影でリンパ漏出を認めるリンパ管の本数が多い」「仕事や生活スタイルを考えると、少しでもストッキングやスリーブを外せる時間を増やしたい」ケースです。リンパ漏出量が多すぎて回収量を上回っている場合は手術をして、少しでもリンパの漏れを減らし、保存療法を手助けする必要があります。この手術がリンパ管静脈吻合術(LVA手術)です。

リンパ浮腫に対して私たちができること
リンパ浮腫はがん手術後、何年も経ってからでも発症する可能性があります。
とにかく、早めに受診し、検査をおこなっていくことが大切です。問題がなければフォローアップのみで済みますし、早期であれば保存療法だけで改善します。そして、QOLや治療の満足度も高くなります。
重症度の評価をきちんとすることが大切です。
リンパ浮腫の治療は「早ければ早いほど良い」。一歩を踏み出して検査に行ってください。

質疑応答
講義後は事前に皆さまからただいた質問に可能な範囲で林先生にお答えいただきました。
事前質問は、

・早期発見方法について
・発症までの期間について
・リンパ浮腫の症状(上肢・下肢)、初期症状について
・治療に入るまでの時間や完治について
・手術について
・リンパドレナージやマッサージ、セルフケアについて
・日常生活で気を付けることについて
・リンパ浮腫予防について

など、多岐にわたりました。

特に気になったことが「体重管理」です。リンパ浮腫の予防として体重管理は私たちができる一番身近な方法ではないでしょうか。太ることにより脂肪が多くなると、それが原因でリンパの流れが悪くなります。体重を増やさない!運動する(筋トレ、ウォーキング、ストレッチなど)ことが重要であるというのはリンパ浮腫の世界に限らず、乳がんや乳房再建の分野でも先生方がおっしゃっています。
体重管理は一番簡単なようで、難しいですが、予防のためにも頑張っていきましょう!

▶参加者さんからの質問にお答え中の林先生

*第二部:林明辰先生、LVA手術経験者に直接聞こう!相談会

第二部はピアリング会員さん限定の企画です。リンパ浮腫を発症して治療中の方、LVA手術を検討中の方、LVA術後ケアを行っている方を対象に、林先生、LVA手術経験者さんに直接相談、経験談を聴く相談会が開催されました。
皆さん、お顔を出していただき、直接先生とおしゃべりしていただきました。
ご参加くださった方々はこれからLVA手術を受けるということで、先生、経験者さんとのおしゃべりを通じて少しでも不安が軽減されていれば嬉しく思います。

今回の笑顔塾はたくさんの要望をいただいたので、ダイジェスト版の動画をアップしました!
ぜひご覧くださいね。

前編:早期診断「がん治療後リンパ浮腫の診断と治療」

後編:早期治療「がん治療後リンパ浮腫の診断と治療」

第29回ピアリング笑顔塾、いかがでしたでしょうか。
ご講演中、林先生が何度もおっしゃっていたのが「とにかく早く!」ということ。
今回の講演を通じて、リンパ浮腫の初期症状や病院を受診するタイミング、また、治療による改善についても学ぶことができ、リンパ浮腫に対する不安が少しでも和らいていただけていれば幸いです。
そして、リンパ浮腫治療は「早期受診」が大切であるということを、今後もピアリング内でも発信していきたいと思います。
また、皆さまからリンパ浮腫関連の知識を更に深める企画の開催希望が多く寄せられています。第2弾、第3弾と開催できるよう頑張ります!

ピアリングレポーター・by うり

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