第27回 笑顔塾 レポート 2022年9月17日(土)開催
ピアリング創立5周年記念オンラインセミナー「Shared Decision Making(シェアード ディシジョン メイキング)~納得のいく治療にするための主治医とのコミュニケーション~」
ピアリングは2022年に創立5周年を迎えました。それを記念して医師によるオンライン・セミナーのシリーズを企画しました。シリーズ最初にご登壇頂いたのは、5年前からずっと、ピアリングを見守り、支え続けてくださった、顧問ドクターの鈴木瞳先生です。ピアリングでは「瞳先生」と呼ばせてもらっています。
瞳先生は、愛知県のご出身。研修医時代に、女性の乳がん患者さんから「乳房を失うこと」を相談されて、一緒になってとても悩んだ経験があり、その時「先生が女性で良かった」と言われたことで「女医として頼られること」に存在意義を感じて、乳腺外科医を志したそうです。
その後、聖路加国際病院ブレストセンターのシニアレジデント・クリニカルフェローを経て、現在は愛知県の一宮西病院で、乳腺・内分泌外科の副部長をされています。
日本語に訳すと「共有意思決定」。患者と医師が、互いの情報を共有しあい、話し合い、治療方針を一緒に決めていくことです。どちらかが一方的に進めるものではありません。
しかし、皆さん、こんな経験はありませんか?
・主治医から、患者さんが自分で決めてと言われ「なんで専門家が決めないで、素人の私が決めるの?」と、どう決めたら良いか分からず、困った。
・本当は「やりたくない」と反論したかったけれど、言い出せず、主治医が決めたことに黙って従った。
・先生の言っていることが「よくわからなかった」けれど、諦めて任せた。
どれも一方通行の関係で、SDMとはかけ離れていますね。納得のいかないままの治療になってしまいそうで心配です。
SDMの基本的な考え方についてはこちらの動画にまとめましたので、ぜひご覧ください。
基本を動画で見て頂いたら、次は実践のコツについて、こちらの記事で簡単にご紹介します。
瞳先生にあげてもらったSDM成功のポイントは
①伝える ②学ぶ ③メモをとる の3つです。
そもそも伝えることが得意!という人は、日本人女性には少ないと思います。がん患者には「これまで大きな病気をしたことがなかった」という病気の初心者も多いようです。主治医に聞かずにピアリングの質問に書いてしまう方も時々見かけますが、ピアリングは「質問の練習」だけにして、その後には、仲間に背中を押してもらって、勇気を出して先生に聞いてくださいね。その積み重ねが話しやすい関係を作っていきます。
瞳先生は「がんという病気が、自分にとってどのような体験なのかという情報を、医者に提供するということは非常に大切です!」と言葉を強めていました。主治医もきっと私たちの言葉を待ってます。
まず何から学ぼうかというときに、通院している病院にあるパンフレットや、病院サイトが活用している動画などから始めると、主治医とも情報を共有できて良いと思います。
また、診療ガイドラインもぜひ活用しましょう。
下記はいずれも金原出版のサイトから購入可能です。
乳癌診療ガイドライン1 治療編 2022年版
乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編 2022年版
子宮体がん治療ガイドライン 2018年版
宮頸癌治療ガイドライン 2022年版
卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン 2020年版
遺伝性乳がん卵巣がんを知ろう!みんなのためのガイドブック 2022年版
遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン 2021年版 ←瞳先生も携わっています
患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2019年版 ←在庫切れにつきAmazon中古のみ
瞳先生は「基本的には、医療者が自分に提示した治療に関することは、全ての情報を理解するつもりで勉強していくと良いと思います」と仰っていました。
診察と診察の間の期間が開いている方も多いです。治療の影響で「物忘れ」もしやすいですよね。ふと「これって治療に関連してるのかな? 治療の影響かな?」と思ったら、こまめに日付と一緒にメモしておくことが大事です。日がたつと変わることもあります。そういう変化を知ることも大切です。
そうして、実際の診察日が近づいて来たら、メモを見なおして、誰にどういう風にこの情報を伝えるか、取捨選択することが必要になります。
最後に、瞳先生から「ポイント番外編」を教えてもらいました。
ごく基本的なことですが「診察時間に遅れない」「診察室の中で家族とケンカしない」には、うんうんと頷いてしまいました。医師だけでなく、他の待っている患者さんへも迷惑ですよね。
男性医師に聞きにくいことってありますよね、という配慮が嬉しいです。そういうことは認定看護師さんへ聞くと良いそうです。
私たちの身体は一つだけ、人生も一度だけ。最善の選択をしていきたいものです。そのために必要なのは、自分を出しつつ、相手を受け入れること。SDMの考え方は、医療にはもちろん、生活上の全ての人間関係においても大切だと感じました。「流される」ことなく、同時に「柔軟に受け入れる」ように、ピアリングを通して一緒にコミュニケーション・スキルを磨いていきましょう!
ピアリングレポーター byミサ (動画編集・レポート)