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【開催レポート】第28回笑顔塾「がん患者さんの生活の質の維持向上のために、漢方薬を使ってみましょう」

11月28日(土) ピアリング5周年セミナーとして、第28回ピアリング笑顔塾「がん患者さんの生活の質の維持向上のために、漢方薬を使ってみましょう」がzoomウェビナーで開催されました。
今回の講師は、漢方薬とがん治療における支持・緩和療法研究の第一人者である、東京慈恵会医科大学特任教授の上園保仁先生です。先生は、「漢方薬」が「なぜ効くのか」(基礎研究)「本当に効くのか」(エビデンス)という研究なども進めておられます。

まずは、漢方の歴史についてここで簡単に触れたいと思います。
漢方の歴史は長く、3世紀初めに中国で「中医学」として始まったものが日本に伝わり、江戸時代に日本人の特性・日本の土壌に合わせて改良されました。それが「漢方医学」という日本オリジナルのものになりました。そんな漢方、医師が病院で処方する医療用漢方薬が148種類あり、自分に合ったものを選べる個別医療のひとつといえます。

抗がん剤と漢方薬。上手に使って治療を乗り切ろう。

講義の前半は、抗がん剤の副作用に使われる漢方薬のうち、吐き気、嘔吐、食欲不振に処方される43番 六君子湯(りっくんしとう)、口内炎、下痢に処方される14番 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)についてわかりやすく解説していただきました。

六君子湯
5つの生薬成分が食欲を出すホルモン”グレリン”の分泌を促し、これにより食欲が増します。このグレリンは、ほぼ全身の臓器に出現するため 肺機能改善、心機能改善など体にいいことが増えるそうです。グレリンを出す薬は西洋薬・漢方薬含め現在、六君子湯だけだそう。
また六君子湯の2週間の処方でヒト血中のグレリンレベルを4週間上昇させたことから、漢方薬はまず2週間飲んで様子をみるとよいのではないか、とのことでした。

グレリンは老化で上手に使えなくなる(グレリン抵抗性)のですが、六君子湯を服用するとグレリン抵抗性が解除されます。メカニズムからいうとグレリンは食欲改善だけでなく、筋萎縮の改善、学習・記憶の改善、心筋組織の萎縮の改善なども望めるので、健康寿命を延伸できそうとのこと。高齢者は1日1包というふうに飲んでもよいのではないかと上園先生はお考えだそうです。

半夏瀉心湯
下痢や、抗がん剤の副作用で起きる口内炎の治癒を早める効果があるそうです。7種類の生薬全てが抗炎症、抗酸化作用、抗菌作用、鎮痛、組織修復の役割を果たし、口の中の細胞を治してくれるという生薬チームプレーを思うと、漢方薬が「合薬」である必然性、重要性が考えられますね。

口内炎で半夏瀉心湯が飲めない患者さんへの投薬の工夫もいくつか教えていただきました。
・服薬ゼリーを使う(いちご味、コーヒー味など)
・溶かして服用する(お湯に溶かして口の中で20秒以上ステイさせて飲む)
 お湯に溶かした半夏瀉心湯を、毎食後30秒ほど口の中に含ませてうがいすると口内炎の治癒が早まるそう。(その後飲むと更にいい)

今後漢方薬の使用がさらに重要と思われる分野について触れたいと思います。
1つめは高齢者領域です。健康と病気の間の未病、またはフレイル(加齢により筋力、認知機能、生活機能が低下した状態)にも漢方医学が重要になると思われるとのこと。

気になる婦人科領域についての効能は?

女性の3大漢方薬として23番 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、24番 加味逍遙散(かみしょうようさん)、25番 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)があります。乳がんのホルモン治療中の方には身近な薬ですね。
これ以外にも婦人科領域の漢方薬はあと10種類くらいあるので、もし3大漢方薬が効かなくても、第2の矢、第3の矢で効くことがあるそうです。

余談ですが、漢方薬が飲みにくいと思っている方はいませんか? 混ぜて飲むおすすめは、ココア・ミロだそうで、漢方の味がしなくなり飲みやすいそうです。よかったらお試しください。

最後は皆さんからの質問に先生が回答

今回も事前に参加者のみなさんからいただいていたたくさんの質問の中から、いくつか先生に回答していただきました。

Q. 特定の西洋薬との飲み合わせが悪い、注意が必要、漢方薬どうしの組み合わせが悪いなど、気にしないといけない事はありますか?

A. 注意が必要なのは量です。1日3回 2.5g×3=7.5gですが、漢方薬を2種類服用すると15gになります。

漢方薬には同じ生薬が含まれているものが結構あり、1番よく使われているのは甘草(かんぞう)  です。量が増えると副作用が起きる事があります(低カリウム血症) 。一緒に飲んでも生薬のダブりがないものは基本的に大丈夫です。

黄芩(おうごん)、甘草(かんぞう)には特に注意してください。例えば68番 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)と43番 六君子湯(りっくんしとう)には、両方甘草が入っているので、きっちり1日3回全部飲むと、どんどん量が増えていきます。何が入っているか見て、同じものが配合されている時は注意です。2種類服用する時は、朝と夕の1日2回に減らすなど量を減らせば、基本的に問題ありません。

Q. 長い期間服用してもいいのでしょうか?服用のやめ時や期間は?

A. 漢方薬服用については、かかりつけ医に相談するのが1番。何年も飲んでいると副作用を起こすものが2つ3つあります。「何年も飲んでいる」「1年飲んでいる」などと個別案件として先生に質問した方がいいです。

やめる時は、まずは減らしていくことから。(朝一包だけにしてみるなどして2週間様子をみる)

漢方は分からないとかかりつけ医に言われる時もあるので、インターネットで検索し漢方薬服用についてだけ別の先生に相談するという方法もあります。

例えば、QLife漢方の漢方病院検索で調べることができます。

Q. 漢方薬に即効性はある?

A. 少ない種類の生薬でできている漢方薬には、即効性があります。68番 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう・こむら返りの漢方薬) 27番 麻黄湯(まおうとう)などは2つの生薬配合で5分くらいで効くそうです。

Q. 漢方が効いているのか、どのように判断するのか目安があれば教えて欲しい。また今の効き目がなかった場合、他の漢方に変えることもできるか、自分に有効な漢方の探し方等あればご教授いただきたい

A. 自分の身体に「しっくり」しているかどうか。この「しっくり感」(なんか前よりいい気がする)が大事です。基準が漢方薬にはあまりないので、大事なのは自覚症状。西洋の薬とは作られた基準がだいぶ違います。西洋の薬は1つの成分が1つの臓器のターゲットに働いて、色んなことが起きます。漢方薬はそもそも生薬で入っていて、生薬の中には成分が何千も入っています。

他の漢方に変えるという第2の矢、第3の矢の選び方には以下の本がオススメです。

「フローチャートがん漢方薬 サポート医療・副作用軽減、緩和に!」

新見正則先生著 2017年4月発刊(新興医学出版社)

Q. 女性に役立つ漢方薬、アンチエイジング、免疫を上げるという意味で適した漢方薬はありますか?体調が悪いわけではないけど、よくするものはありますか?

A. 健康長寿という意味では、六君子湯はいちおしです。漢方薬は足りないものを補う種類の漢方薬があり、補剤といいます。三大補剤として、48番 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、41番 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、108番 人参養栄湯(にんじんようえいとう)があり、この3つは人として元気に生きる3大ベースとなります。

また137番  加味帰脾湯(かみきひとう)は、愛情ホルモンであるオキシトシンの動きを高め活発化させるので、女性の方にプラスになります。特に悪い感じでもないけど何かあるかしらという未病・フレイルの部分に自分が入りそうであれば、補剤と加味帰脾湯を使ってみるのが1つの手かも知れません。

参加された方からの感想をご紹介

最後に今回参加された方の感想を一部ご紹介します。

・選択肢の一つとして漢方薬を取り入れた治療の提案をしてくださるドクターが増えるといいなと思いました。

・時間が足りないと感じました。それくらい、とてもいい回でした。画面越しに拍手しました。上園先生第2弾をお願いしたいです。

・セミナー中にご紹介頂いた、アンチエイジング効果や、愛情ホルモンが出る漢方薬もある事をしり、治療とは別で健康で美しく生きていく為にとても良いお薬があるのだと、知る事が出来て興味深かったです。

・ホルモン治療での更年期障害に関わる漢方薬について、もう少し詳しくお話が聞けるととても嬉しいです。

・漢方は味が独特で一般的に飲みにくいと思いますが、自分の身体にあった漢方は、味も飲みやすく感じるといった話も聞きましたが、どうなんでしょうか?体感して確認したいと思いました。

・ホルモン療法の副作用解消のため漢方薬を飲んでいます。血液検査の必要性や気になっていたことが聞けて良かったです。自分に合う、合わないは(2週間飲んでみて)しっかりくるかどうかということに納得しました。

感想をお寄せくださったみなさん、ありがとうございました。

当日のダイジェスト動画が見られます。参加できなかった方はぜひご覧ください!

【笑顔塾28】
「がん患者さんの生活の質向上のために、漢方薬を使ってみましょう」前編

「がん患者さんの生活の質向上のために、漢方薬を使ってみましょう」後編

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