先日オンラインで開催した第15回ピアリング笑顔塾。
関心の高まっている「HBOC(遺伝性乳がん卵巣が ん症候群)」がテーマなだけに、講義はたくさんの質問が寄せられていました。
そこでも挙げられていた、「HBOCと民間保険」に関する疑問について、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子先生に、詳しく教えていただきました。
今回のセミナーにも参加してくださっていた黒田先生は、乳がんサバイバーでもあり、聖路加国際病院のがん経験者向けサロン「おさいふリング」のファシリテーターなども務めています。
HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)と民間保険(以下、保険)について関心のある方はぜひお読みください。
「現在、保険加入時の告知書には、遺伝子情報や家族歴を記入する欄はありません。
仮に、遺伝子検査によって、将来、がんを発症する可能性が高いことがわかっていても、保険会社は、保険の引き受けや支払いの際に遺伝子情報を使用することはない、というのが原則です。
Hなぜなら、生命保険は「相互扶助」という助け合いのしくみの上に成り立っており、遺伝子情報を利用すると、遺伝差別になりかねないからです。
したがって、未発症であれば、カウンセリングのための通院や定期通院があっても、保険には加入できます。」
「予防的乳房切除に関して告知書の該当可否は、全ての保険会社で統一されていません。
その保険会社の認可の内容次第です。大きく分けると、予防は告知対象外になる場合と、手術は全て告知の対象になる場合があります。
いずれにしても、遺伝子検査を実施したこと、そのために医療機関を受診したこと、予防的乳房切除を受けたことなど、告知書に記入しても、査定実務として情報を使用しないという原則を踏まえた上で、告知書に沿って正しく告知すれば大丈夫です。」
「いずれの場合も加入はできるはずです。ですが、万一謝絶になったら、『未病で遺伝子検査を受けて、定期通院しているだけ』と、保険会社へ申し出てみてください。
万一対応してもらえない会社があれば、原則に反しているわけですから、他社へ申し込みを変えればよいと思います。
ただ、生命保険協会は、遺伝子検査と保険実務に関するガイドラインを作成していない状況で、この原則がきちんと運用されていない可能性もゼロではありません。
謝絶などの対応があった場合には、私の方にご連絡ください!」
「前述のように「遺伝子変異による未病に対して加入は拒絶しない」という一方で、「それに関する医療は給付の対象外」という原則もあります。
そのため、すでに乳がん等を発症している方が、入院して、乳房や卵巣の予防的切除を行った場合、がん保険や医療保険の給付金が出ない場合があります。(がんの直接の治療に該当しないという理由から)
現時点では、会社によって、給付の対象にする場合や個別に対応している場合などさまざまですので、『保険適用になる手術だからもらえるはず』と思い込まず、治療を受ける前に確認することをお勧めします。」
黒田先生、アドバイスありがとうございました。
各種セミナーや講演、執筆、個人相談など、幅広く活動。がんをはじめ、病気に対する経済的備えの重要性を訴えている。2009年12月に乳がんに罹患しインプラントで再建。
乳がん体験者コーディネーター(BEC)も取得。著書に「がんとお金の本」など。
公式サイト
http://www.naoko-kuroda.com/
*患者さんへの無料相談も行っています(現在はお電話かメールのみ対応)。なお、相談内容によっては、有償となる場合があり、その際はその旨をお伝えします。
文・黒田尚子 編集・ピアリング編集部