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【開催レポート】第33回ピアリング笑顔塾 「頻尿・尿漏れ・腟の乾き・性交痛などに悩む方へ〜GSM(閉経関連尿路性器症候群)の症状と治療を学び、悩み解決を目指しましょう」

7月13日(土)、第33回ピアリング笑顔塾を開催しました。

人に聞けないデリケートな悩み……

今回テーマに取り上げたのは、女性の泌尿器・性器に関わること。誰しも気にはなっているけれど、捉え方の個人差も大きく、また悩みの度合いも人それぞれで、なかなか話題にしにくい内容ですよね。そんなテーマに真正面から向き合ってみる、という貴重な時間になりました。

講師は、女性医療クリニック・LUNAグループの理事長で、横浜市立大学大学院医学部 泌尿器病態学講座 客員教授の関口由紀先生です。主に閉経前後の中高年女性を対象として、GSM(閉経関連尿路性器症候群)の治療・啓発などに力を注いでおられます。先生ご自身も42歳で乳がんに罹患し10年間のホルモン治療を経験された、がんサバイバーでもあります。

尿漏れ改善の基本はセルフケア

約50分間の講演で、前半は尿漏れにまつわるお話が中心となりました。女性は尿道が短いこともあり、誰でも尿漏れはするということ。腹圧性尿失禁と、過活動膀胱の二つの尿失禁があること。改善には骨盤底筋を鍛えるトレーニング(骨盤底リハビリテーション)が有効であること。尿漏れのために楽しみをやめたり、家に閉じこもったりする場合は病院を受診することなど、非常に具体的なお話をいただきました。トレーニングには「ピフラティス」という運動があり、動画を交えてのご紹介が実用的で印象に残りました。

おしっこを我慢したり、出したりするには、骨盤底筋をとにかく鍛えること!という基本を先生は繰り返しお話しされました。尿漏れのコントロールなど出来るものなの?という疑問を私自身、持っていましたが、骨盤底筋運動を続けることでそれが可能になると言います。また猫背は良くなく、姿勢を正すことも骨盤底筋を鍛えるのに効くそうです。期間の目安は「まず3ヶ月自分で頑張ってみて、改善の満足度が70%以下なら、クリニックを受診」とのことでした。

自分で行う運動のほか、尿漏れには投薬や注射、手術などの治療法があることも紹介され、「尿漏れは、諦めてはいけない!」ということを知りました。

骨盤臓器脱についての知識も

腹圧性尿失禁は50代、過活動膀胱は60代に多い症状。そして70代になると増えてくるのが「骨盤臓器脱」だそうです。子宮や膀胱、直腸といった骨盤内の臓器が下がってきて、腟から出てくる症状ですが、これに対する「ペッサリー」を使った治療や、自己管理ができると言うことも教えていただきました。

単なる老化で済まされない「GSM」のこと

講義の後半のテーマは「GSM」。実は私はこの言葉を、今回初めて聞きました。日本語では「閉経関連 尿路性器 症候群」と言い、閉経に伴う、外陰・腟の萎縮変化およびそれに伴う不快な身体症状を指します。従来の「老人性腟炎(萎縮性腟炎)」より、病状や病態を包括的に扱う概念だそうです。

なんと、閉経後女性の50%に発生するというGSM。特に、がんの治療を受けることで、通常より若くして閉経することも多い私たちがんサバイバーにとっては、年齢に関わらず気を付けたい症状です。それなのに、これまで私はほとんど意識することなく過ごしていたわけです……。

先生によりますと、GSMには大きく3つの症状があります。

1.陰部の乾燥・違和感(イガイガ感)
2.性交痛他のセックストラブル
3.尿トラブル(頻尿・尿漏れ・再発性膀胱炎)

これらの症状は進行性なので、予防、そして症状に気付いた時からケアすることが大切とのことでした。ケア方法には、フェムゾーンの保湿や性ホルモンの局所投与、そしてレーザー治療など様々なものが紹介されました。

質疑応答でも本音のご回答が

講義後には、事前に参加者の皆様から寄せられたご質問に、関口先生から直接ご回答いただきました。普段主治医にも聞けず、一人で悩まれているようなデリケートな話題も多く寄せられました。

「子宮摘出手術後、腟が広がる感じがしない」「内診時のクスコが痛い」と言った腟萎縮による問題や、「尿もれする時期としない時期がある」「抗がん剤治療中の頻尿対策は」などの排尿問題。さらには、「性交痛が憂鬱で全くそういう気にならなくなり、嫌悪感も拭えない」「性交がお互いプレッシャーになる」と言う心理的な問題についても、ホルモン補充で改善される例があるなど、豊富な症例に対応されてきた先生ならではの有益な助言をいただきました。

初めて聞くお話しが満載でした!

がん治療に向き合っていると、なかなか自分のがん以外の臓器のことまで目が向かないことがあります。直腸がんの私にとっては、婦人科・泌尿器科は少し向こう側の存在でした。でも、がんの治療とはまた別の「命に直接関わらないけれど、日々の生活の質を大きく左右する」のが泌尿器・性器周りの悩みなんですよね。それらの悩みは、がん治療が由来で起こることも多々ありますし。女性がんサバイバーにとって、今日のお話は本当に目から鱗と言いますか、知っていると知らないとではこの先の人生の快適さが全然違ってくると感じました。

関口先生のおっしゃる「女性のラスト10,000日、約33年間のQOLを維持するためには、骨盤底筋群・下半身の強化!!」を真剣に受け止め、運動を習慣化やフェムゾーンケアなども始めてみようと思いました。

講演のアーカイブ動画も準備しています。
ここでは書ききれなかったことも多々ありますので、ぜひご視聴いただき、新たな学びを得ていただければ幸いです。また、参加された方にも、運動方法やケア方法などを復習し、日々の生活に役立てていただければと思います。

文責:ピアリング理事 佐々木香織(カロリーナ)

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