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【開催レポート】第30回笑顔塾「がん患者さんの『食べる』を支える食事の工夫」

食事・栄養に関わる主治医は自分自身!~

7月13日(木)ピアリング第30回笑顔塾 「がん患者さんの『食べる』を支える食事の工夫」が、Zoomで開催されました。今回のセミナーの事前質問のアンケートに寄せられた質問は、なんと100件を越え、『食』にさまざまな悩みを抱えるがん患者さんの多さ、関心の高さがうかがえました。

ご登壇いただきました川口美喜子先生は、がん病態栄養専門の管理栄養士・医学博士で、大妻女子大学家政学科の教授を務められています。さらに、マギーズ東京や暮らしの保健室で、がん患者さんやご高齢の方への相談活動・栄養支援にも取り組まれており、色とりどりのスムージーや、ワンプレートでのバランスメニューなど、楽しく取り入れやすい食事のご提案もされています。

がんの食事と栄養

まず始めに、がんの食事と栄養についての正しい知識についてお話しいただきました。

がん治療中の方も、治療が一段落した方も、普通の人と同じように実践して欲しい「5つの健康習慣」

1・禁煙をする
2.食生活を見直す
3.節酒する
4.身体を動かす
5.適正体重を維持する

具体的には

・節度のある飲酒を心がける(1日あたり日本酒1合・ビール中瓶1本・ワインボトル1/3など)
・減塩を心がける
・熱い飲み物や食べ物は冷ましてから
・野菜や果物を積極的に摂る
・ハム、ソーセージなどの加工肉、及び赤身肉(牛・豚・羊など)は1週間に500gを超えない
etc

がん患者さんも、再発予防のために特別なことをする、というよりも、普通の人と同じように気を付けることが大切です。
しかし、がんに罹患すると、今後の治療のこと、経済的なこと、仕事、家族、生活のことなど、たくさんの問題に戸惑い、その辛さから「食べる」を考えることがどうしても後回しになりがちです。
がんにかかった方の多くは栄養不良になることがわかっていて、(ホルモン療法の影響で脂肪が増えることも含む)その栄養不良が、治療の予後と経過を左右します。
「がんの食事と栄養」について考え、食事を摂ることは、治療中、治療後の身体に大きな影響を与えます。ご自身で情報収集することも大切ですが、がんの治療に効果的な食事、治療中の体力を維持する食事に関わる情報を得るために、積極的に栄養カウンセリングができる場所を探し、相談してみるのもおすすめです。

食事・栄養に関わる主治医は自分自身

川口先生のところに相談に来る多くのがん患者さんは、まず「摂ると良い食品〇と悪い食品×を教えてください!」とおっしゃるそうです。しかし、たくさんの情報があふれる中で、〇×だけで考えようとすると、あれも×これも×、と×がどんどん増えて、食べることがさらに難しくなってしまいます。

「がんになったのは自己責任だから」
「お酒をたくさん飲み過ぎちゃったから」
「ジャンクフードやおやつがやめられなかったから」etc

そんな思いがあって、「食べる」ことに厳しくなってしまうのかもしれません。

でもそのことが原因とは言いきれません。
これからは正しい知識を持って、「食べる」を考えていけば良いのです。

「食事・栄養に関わる主治医は自分自身です。食べられるときに、食べたいものを食べてください。何を食べても良いんです。」(川口先生)

管理栄養士さんは、食事・栄養について、指導はできても毎日の食事を提供することはできません。自分の毎日の食事を考えることができるのは、自分自身だけです。
例えば、下痢や便秘などの症状が出たときに、2,3日前の食事とお薬、身体を動かしているか、などを思い出してください。その中にヒントがあることがあります。あなたの生活環境、生活習慣、食生活に合わせた食事のポイントを、まずは自分が考えてみる。そして、正しい情報の中から、選択して実践する。

体と心に耳を澄ませてください。
主治医はあなた自身なのです。

具体的な食事のポイント(一部抜粋)

ここでは具体的にどんなことに気を付けたら良いか、またどんな工夫があるのか、今回の講演でたくさん教えていただいたポイントの中から一部をご紹介します。

1.腸脳相関

食べたい気持ちを持ち続け、免疫力を上げていくために大切な「脳腸相関」。腸内環境は脳機能に影響を与える、ということが分かっています。ご自身の消化器症状を確認し、腸の状態を良好に保つことは、ストレスや炎症に対抗できる力となり、抗うつ作用など、脳にも大きな影響を与えます。

☆「バランスのとれた食事と規則正しい生活」が基本
☆シンバイオティクス(腸内免疫力)・・・プロバイオティクス(発酵食品)+プレバイオティクス(オリゴ糖や食物繊維) 一緒に摂ることで免疫力UP!

2.味覚障害

☆酸味のあるものが好まれる・・・酸味は最後まで残る味覚(ポン酢・ケチャップ・ソースなど)
☆マヨネーズを活用する・・・酸味+苦みをマスキング(ポテトサラダ・マカロニサラダなど)
☆うま味・・・野菜、きのこのうま味+ごま、牛乳、バター
☆口内調理と飲み込みやすさ・・・丼物、カレーライス
☆芋類・南瓜・・・甘く煮る
☆スムージーは飲み込みやすい

味覚障害は一生ではなく、ほとんどの人が戻ってくるので、がんばりましょう!

3.口内炎・渇き

普通の口内炎と違って、深いところまで傷害されるので痛みが強い

☆まずは口腔ケアをする
☆とろみを付ける・・・あんかけ・とろろなど
☆口の中で溶けない料理・・・ミルクゼリー・ババロア・ムース
☆食事をする前に冷たい物を口にすると食欲UP
☆「うま味」水を用いたセルフケア・・・昆布を一晩水につけたものでうがいをすると渇きが改善

4.食欲がないとき

主食・主菜・副菜・果物・乳製品をとれるよう心がける

☆おかゆにシラス、卵、人参、ねぎ、ほうれん草など足してなるべく多くの栄養素をとる
☆煮込みそうめんに刺身と野菜でも美味しくいただける
☆ミニミニにする・・・ミニ丼・ミニ焼きおにぎり・ミニサンドイッチ
☆病院食が食べられない・・・蓋をラップに変えてみる
☆テーマ(お月見・ピクニックなど)を決めて、小さいプレートにまとめる

5.スムージーはおすすめ

色にこだわると食欲が出る
野菜+豆腐+果物+ナッツ(+牛乳や豆乳)

例)緑のスムージー・・・ブロッコリー+絹ごし豆腐+りんご+ナッツ
  赤のスムージー・・・パプリカ+絹ごし豆腐+バナナ+ナッツ

マギーズ東京で提供しているそうです!

その他にも吐き気・嚥下障害・体重減少、増加・準備がつらいなどのお悩みに、たくさんのヒントをいただきました。また、Q&Aも盛りだくさんです。ぜひアーカイブでもチェックしてみてください!

お悩み別レシピの検索はこちら【カマエイドKama-aid】https://kama-aid.com/

食事は美味しく、見た目も綺麗に、楽しく!

川口先生が接したがん患者さんとのご経験のお話の中にも、たくさんの工夫やヒントが詰まっていました。

食べる意欲を失っていた方が食べられるようになる食事のことを「きっかけ食」と言います。例えば、故郷の味噌汁、お母さんの卵焼きなど、そのひとにとってのストーリーがある食事は、目の前にある食べ物の向こう側の思い出が、食欲を呼び覚ましてくれることがあります。
実際、全く食べることのできなかった元サザエ売りの患者さんに、サザエご飯を出したことがきっかけで、食事が食べれらるようになったそうです。
「食べる」というのは、その人の物語から生まれるものなのですね。

最後に川口先生はこんなお話をされました。

「食べる喜びを支え続けたいな、と思うんです。生きる力の根源としての食を提案する仕組みを、もっともっと作っていきたい。望む食事ができる状況にあって、治療にも挑む方が良いと考えています。人は老いて機能が低下し、病の最後は食欲を奪い取るかもしれない。それでも、「ごちそうさま」と食べる喜び・笑顔を持ち続けられるような食事を提案し続けたい。そして家族・友人・知人・・・・に残される「美味しい笑顔」がありますように、そんな想いでお話をさせていただきました。」(川口先生)

川口先生の素敵な言葉の数々に、最後のチャット欄にはたくさんの先生への感謝のメッセージが書き込まれました。
その中には「お腹すきましたー」の言葉も(^^)

皆さん、美味しい食事が召し上がれましたか?

文責:ピアリング編集部 Namy


ピアリングのYouTubeチャンネルでは、この笑顔塾のアーカイブ動画を配信しています。「参加できなかった」「もう一度聞きたい!」という方はぜひチェックしてくださいね!


■川口美喜子先生著書

がん専任栄養士が患者さんの声を聞いてつくった73の食事レシピ

いっしょに食べよう


■川口美喜子先生監修

【カマエイドKama-aid】https://kama-aid.com/


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