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【セミナーレポート】知っておきたい!乳がん患者が直面している「インプラントリコール問題」

知っておきたい!乳がん患者が現在直面している「インプラントリコール問題」とは (ティーペック特別協賛セミナー「インプラントによる乳房再建の今を知る!」より)

乳がん患者が治療のため乳房を切除した後に、失った乳房を再び作る乳房再建。女性にとって大切な乳房を取り戻すのは、その後の人生を前向きに過ごせるなどQOLの面で大きな意味があります。乳房再建の方法はいくつかありますが、現在、健康保険が適用されているのはおなかや背中の組織を使う「自家組織による再建」と「インプラントによる再建」です。


リコール理由は、血液がんの一種乳房のふくらみをつくるための組織拡張器「ティッシュ・エキスパンダー」(二期再建の場合)、乳房の中に入れるシリコンジェルを袋に入れた「インプラント」が必要になりますが、2019年7月25日、健康保険が適用されているアラガン社のインプラントとティッシュ・エキスパンダーが突然、自主回収・販売停止となりました。

リコール理由は、血液がんの一種「ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)」

リコールの理由は、米食品医薬品局(FDA)が2019年7月24日、アラガン社のテクスチャードタイプ(表面がザラザラとした)インプラントが血液のがんの一種「ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)」の原因となっていると発表し、同社に該当製品の自主回収を要請したためです。BIA-ALCLはブレスト・インプラントを入れてから平均8〜9年ほどで発生し、インプラントの周囲に液体がたまり、大きく腫れるといった症状が出る可能性があります 。

リコール以来、健康保険が適用されるインプラントとエキスパンダーが無くなるという状態が続きましたが、2019年10月にはアラガン社の「ナトレル 133 ティッシュ・エキスパンダー」と「ナトレル ブレスト・インプラント(Inspiraシリーズ インプラント)」が薬事承認を取得し、保険適用になりました。

このエキスパンダーとインプラントはBIA-ALCLのリスクが低いといわれている、表面がつるつるとしたスムースタイプ。インプラントの形状はリコールとなったアナトミカル型(しずく型)ではなく、丸いラウンド型です。

これから乳房再建を考えている・すでに再建をしていて不安をもつ乳がん患者向けに「インプラントによる乳房再建の今を知る!」セミナーが開催

インプラントリコール問題が大きな影響を与える中、インプラントによる乳房再建の現状と正しい知識を知ることができるセミナー「人工物(インプラント)による乳房再建の今を知る!」(一般社団法人KSHS主催)が2020年3月9日、ティーペック本社にて開催されました。

講師はインプラントによる乳房再建の第一人者、ブレストサージャリークリニック院長の岩平佳子先生です。

講演はまずBIA-ALCLについての話から始まりました。
「欧米の患者が中心で、日本では17年前に再建した人が1名発症しましたが、確率は0.02%以下。これは麻酔によって起こる事故よりも少ない確率です。水が溜まっている、腫れているという状態になっても、インプラントと被膜を取りのぞけば完治します。過度に心配せず、まずは1年に1回診察を受けること。あと腫れてきたら病院にすぐ行くということだけ覚えていてください」(岩平先生)

また世界で報告されている573例のBIA-ALCLのうち、アラガン社のものは84%、そしてこれから保険適用になっていくと思われるアメリカのメンター社は7%、シエントラ社は4%となっています。

続いて「とても大切なこと」と前置きをしてから岩下先生が話したのは、アラガン社以外のインプラントが保険適用になるのを待ちましょうと担当医に言われて、10ヶ月、1年とエキスパンダーを入れたままにしている患者が多いということです。

「エキスパンダーは長い期間持つように作られていません。私のクリニックにも破損して駆け込んできた人がいました。理想は8ヶ月と私は言っているのですが、入れてから1年以上たっている方は破損する可能性があることも覚えておいてください。」(岩平先生)

保険適用となったラウンド型スムースタイプのインプラントについての誤解
スムースタイプは被膜拘縮になりやすい?自然できれいな乳房はできない?

昨年10月から保険適用となったラウンド型スムースタイプのインプラントについて、「被膜拘縮」という合併症が起こりやすいといわれていることに話が及びました。乳房再建には、異物であるインプラントに対する自己防衛反応として生じる被膜が硬くなり、変形や痛みを起こすのが「被膜拘縮」です。

「スムースタイプが被膜拘縮になりやすいと言っているのは、かつて保険適用だったテクスチャードタイプより前に使われていた昔のスムースタイプと現在のものを混同している医師が多いようです。昔と今ではインプラントの作りが違います。私の恩師であり、アメリカで一番インプラントを使っていたスコット・スピアー先生の調査では『乳房再建で10年使用したインプラントの被膜拘縮のリスク』は、スムースタイプが25.8%、テクスチャードタイプが23.7%で、違いは2.1%と小さいものでした」(岩平先生)

さらに「自然できれいな乳房を作るには、アナトミカル型じゃないとできない。ラウンド型では無理」といわれていることに対しては

「ラウンド型だから美しく作れないということはないです。美しい乳房をつくるためにはインプラントのサイズをはじめ、いろんな要素が必要となりますが、一番大切なのはエキスパンダーを入れる位置です」(岩平先生)

今後のアラガン社以外の保険適用の見込みについて

「『シエントラ社は今年の秋くらい、メンター社は来年くらいに保険適用となるかも』といわれていますが、はっきりとは決まっていません。

現在保険適用になっているスムース・ラウンドのインプラントを避けて、シエントラ社やメンター社の『マイクロテクスチャードタイプ・アナトミカル型』インプラントの保険適用を待つというのはひとつの選択肢ではありますが、エキスパンダーが破損するまで放置するのは危険です。

またシエントラ社はサイズの種類が少なく、メンター社は大きいものが多いです。ご自身の乳房に合うサイズがなければ美しい乳房を作るのは難しいので、そのあたりも理解してご自身の乳房再建を考えてください」(岩平先生)

『自分の体は自分で守る』患者も正しい情報を得る努力を


講演後は約30分間Q&Aの時間を設けられ、BIA-ALCLや乳房再建、今後のインプラントの保険適用の動向、昨年10月に承認されたエキスパンダーやインプラントなど、多岐にわたる質問が寄せられました。

「すでに入っているインプラントを抜去する必要はありますか?」という質問に対しては「厚生労働省のWEBサイトにも載っていますが、症状のない人はインプラント抜去の緊急性はありません。それにもかかわらず地方都市で治療を受けている患者さんが『抜去しろ』と担当医から言われて悩み、私のクリニックにセカンドオピニオンを求めて2人もやってきました。残念ながらあまり勉強していない医師もいます。患者さん自身も正しい情報を得る努力をしていただければと思います」と回答。

すべての質問に淀みなく明確に答える岩平先生と、真剣な表情で耳を傾ける参加者のみなさん。インプラントリコール問題でモヤモヤとしていた人も今回のセミナーで、かなりスッキリとしたのではないでしょうか。

締めくくりには、主催した一般社団法人KSHSの代表理事・溝口綾子さんから
「たくさん質問をいただいて感じたのは、正確ではない情報が多く流れているのだということ。『自分の体は自分で守る』という意識を持って、正しい情報を見極めてください。そして前向きな気持ちで生きていってほしいです」とメッセージが。内容の濃い、充実したセミナーとなりました。

※このレポートは特別協賛企業のティーペック(株)からの寄稿です

               
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