がんという予期せぬライフイベントに直面した人が生活・就労を無理なく両立できる社会を目指している「一般社団法人がんと働く応援団」から、コラムの2回目が届きました!
がんの患者さんやサバイバーさんを病院内外で支えている専門家の方たちをご紹介するシリーズです。その方たちのことを少しでも身近に感じていただいていざという時の頼り先を知っていただければと思います。今回もQ&A方式でお送りします。
②スクールソーシャルワーカー(SSW)・スクールカウンセラー(SC)編
がんと働く応援団でも活躍いただいているお二人の専門家にご登場いただき、お子さんとの向き合い方についてお話いただきます。
プロフィール
●武田亮子さん:社会福祉士、精神保健福祉士、国家資格キャリアコンサルタント地域統括支援センターでソーシャルワーカーとしてお仕事に従事都立高校のSSWとしての経験もあります。
●宮崎加奈子さん:臨床心理士、公認心理師、精神保健福祉士がん研究会有明病院で腫瘍精神内科及び緩和ケアチームに所属し臨床心理士として勤務したのち、独立。現在、医療現場で臨床心理士として働きながら小学校のSCとしても活躍中
Q:武田さんご自身も、がんサバイバーでありお母さまでもいらっしゃるのですよね?
武田さん(武):そうなんです。2016年に稀少がんである十二指腸がんが見つかり、13時間におよぶ手術、その後補助療法として抗がん剤治療をおこないました。
おかげさまで今は落ち着いており、ソーシャルワーカーとしての相談業務も継続させていただいております。子供はがんの診断当時、19歳の娘、16歳の息子、9歳の娘でした。
Q:具体的にはどのようにお子さんにお伝えになられたのですか?
武:少し悩んだのですが、息子はちょうど思春期真っ只中。
しかし、私が体調があまりにも悪く自分の言葉で説明できる状態でなかったこともあり、思い切って普段頼りない息子を術前のドクターの説明時から同席させたのです。
ドクターが絵を描くなどして丁寧に説明してくださったこともあり、最後には息子自ら質問までしていました。高校生の息子を一人の男として、重要な役割を担わせたことで、家族からも頼りにされ、その数か月間でぐっと大人になった様子が見られ自分の選択が正しかったと思えました。
私の場合、家族への告知は成功しましたが、小さいお子さんのいる家庭の場合、それはまたデリケートです。小学校のカウンセラー等お子さんの性格も考慮したうえで、周囲の利用できる支援をうまく活用しお話しされるとよいかと思います。
Q:もっと年齢の低い小さいお子さんの場合、どのように伝えるのがいいのでしょうか?
宮﨑さん(宮):小さいお子さんの場合、「病気であることや病名を黙っておくのがいいのでは?」と思われる方が多いのですが、可能な限り伝えることをお勧めしています。
というのは、お子さんは、敏感に親の変化を感じ取っています。そして「お母さんなんて死んじゃえ」「いなくなっちゃえ」と軽く考えた事が現実になってしまったのではないかと自分を責めてしまいがちなのです。そうならないように、3つの「C」を伝えることが大切とい われています。「がんという病名(Cancer)、うつらないこと(not Catchy)、そして誰かのせいではないこと(not Caused)」です。
そして、今すぐ死んでしまうわけではないこと、そのために治療をしていることなどを付け加えてあげるのもよいと思います。もちろんご家庭の事情などによってタイミングはそれぞれでかまわないと思います。
武:そうですね。当時9歳だった末の娘も、実は怖かったようです。ようやく今(13歳)になって病気のことを聞いてくるようになりました。
子どもにとっては、つらい時期だったかもしれないけれど、「本人自身に乗り越える力がある事を信じる」ことは大切だと思います。
Q:治療しながら生活を送る際、子供との接し方で気をつけるポイントはありますか
宮:できれば、少しでも”お手伝い”ができる場面を作ることをお勧めします。
お子さんを病気から遠ざけてしまうと、疎外感や無力感で自信をなくしがちになります。
しかし”お手伝い”をすることで、親の闘病に「役立っている」という気持ちが生まれ自信につな”がるからです。実際に家事ができる年齢でなくても「今、お母さんは具合が悪いから、元気になるまで静かにするお手伝いをしてね」という風に、治療・療養に協力してもらうのもいいと思います。
Q:ほかに気を付けるべきことありますか?
宮:「子供は学校に行かせないほうがいいのではないか」と相談されることもあるのですが、”学校に行く””部活をする”という今までの社会生活を続けさせてあげることが、お子さんの安心感につながることが多いということも、知っておいていただけるとよいと思います。
もちろん、お子さんの状況によっても違いますので、「うちの子は告知やその後の通学も難しい」といった場合は、一人で悩まずスクールカウンセラー(SC)などを頼っていただければと思います。
Q:スクールソーシャルワーカー(SSW)とスクールカウンセラー(SC)の違いについてもう少し詳しく教えていただけますか。
武:一般的には、心のケアに対応するのはカウンセラー、それ以外の福祉や就労に関する課題についてはソーシャルワーカーが学級担任や養護教諭等と連携して生徒を支援していきます。生徒だけの問題ではない時は、その保護者も含めて家庭支援を行うこともあります。私が対応したケースで、当時高校2年生の女子生徒のケースがあります。最初はお母さんが、そしてそのすぐ後にお父さんががんと診断されました。ご両親の退院後も生活の維持ができるよう、卒業まで学校を続けられるようにと様々な社会資源を活用し支援しました。
このような例は珍しいとは思いますが、学校に通っているお子さんがいるご家庭は、心配事があればまず担任の先生か養護教諭に相談してみてください。そうすれば、必要とする支援につながりやすくなりますので是非活用してください。どうもありがとうございました!
(武田さん、宮崎さんから聞いた役に立つ興味深いお話はまだまだあります。こちらに載せきれなかった内容はがんと働く応援団HPに掲載しています。)
文:一般社団法人がんと働く応援団 野北まどか