がんサバイバー女性のための情報サイト|ニュース・ピアリング

【第2弾】 エーザイ株式会社とピアリングの「共同化」。製薬企業とがん患者の私たちが共に時間を過ごしお互いの想いを知る「講演・座談会」

エーザイ株式会社の活動の原点「共同化」­ ~患者様と生活者の皆様の想いを知ること~

2025年10月23日、エーザイ鹿島事業所を、ピアリングのメンバー3人が訪問しました。

エーザイ株式会社は、ご周知のとおり「ヒューマン・ヘルスケアのエーザイ」 というキャッチフレーズで有名な日本を代表する大手製薬企業です。

同社は、企業理念として「患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献し、世界のヘルスケアの多様なニーズを充足する」ことを掲げています。
この理念を実現するために、同社が最も大切にしているのは、患者様や生活者の皆様の想いを深く理解することです。その取り組みの一環として、全社員が業務時間の1%を患者様や生活者の皆様と直接過ごす活動(「共同化」)を実施しています。

昨年、ピアリングの会員さん2名と理事1名スタッフ1名が、 エーザイ鹿島事業所へがん経験者の「講演・座談会」 にお招きいただき工場見学なども通して交流の機会をいただきました。

昨年のピアリングとの「共同化」が大変好評を得て、今年も、がん患者さんと共に過ごす「講演・座談会」にお声がけいただきました。

昨年は婦人科がん経験者の講演会でしたが、今年は乳がん経験者で企画いただきました。

ピアリング会員 かずみさん、スタッフとも、ピアリング会員 かおまるこさん

「ステージⅣ乳がん患者における8年間の生存戦略」

一人目の講演者は、かずみさん(乳がん経験者)です。冒頭から、「 本日は私の研究である『ステージⅣ乳がん患者における8年間の生存戦略』について発表します……、というのは冗談で、研究発表風のスライドに乗せて、私が乳がんと共に過ごした7年10カ月をお届けします。」 といった笑いを取り入れて、場を和ませてくださいました。

かずみさんは、乳がんに罹患し、辛い抗がん剤治療を続ける中、副作用の脱毛中もスキンヘッドやウィッグでのおしゃれを楽しんだり、明るく前向きで、抗がん剤治療中もフルマラソンに参加しベストタイムを更新したエピソードなどから、聴講者のみなさんから感嘆の声が上がりました。

講演後の質問では、「とても前向きなお人柄ですが、そうしたお考えや姿勢は、幼い頃から培われてきたものなのでしょうか?」といった質問が交わされました。

かずみさんのマラソンエピソードはエーザイ社員さんに衝撃的だったようで、その後の工場見学へ行く移動中の雑談でもマラソン話に花が咲きました。

「がん治療とSNS」

二番目の講演者は、かおまるこさん(乳がん経験者)です。かおまるこさんはインスタグラマーとしてご自身の乳がん経験をInstagramでも発信しています。講演資料にもInstagramで投稿したリール動画を組み込む工夫が凝らされて、闘病の様子が聴講されているエーザイ社員さんにダイレクトに伝わりました。

AYA世代でがんに罹患したことの辛さ、SNSとの上手な付き合い方などについて発表し、

「がんの告知を受けられた際、どのようにして病気に関する情報を集められたのでしょうか?」
「がんの告知を受けられた後、ご家族はどのようなご様子でしたか?」

 といった質問があがりました。

「 もし乳がんに罹患しなければ、今頃看護師としてキャリアを積んでいたのに…、自分だけ置いてきぼりになった感じ…」 というお気持ちを話してくださり、病気になって生活が変わってしまったリアルな実状が伝わりました。

ピアリング、ピアリングブルーの紹介と自主調査「時間毒性」の共有

二人の講演の前後に、ピアリングスタッフの淀川より、一般社団法人ピアリングについてのご紹介と、ピアリングの活動の一環として実施した自主調査 『がん治療に要する時間とその影響 ~がん患者が直面する時間毒性の実態調査~』 について共有させていただきました。

「時間毒性」の調査結果については、関心をいただき、その後の座談会でも病院での待ち時間体験で共感し合いました。

座談会で社員のみなさんと交流

「時間毒性」調査結果発表の後、3つのグループに分かれて座談会が行われました。エーザイ社員さんが、患者の想いを知る「共同化」です。

エーザイの社員さんが話しやすい雰囲気を作ってくださり、それぞれ患者の経験や想いを自然体でお話できました。

がん罹患経験の無い方が、がんサバイバーの経験や想いを知ることは大変困難なことだと思いますが、それでも、エーザイ社員のみなさんは、私たちがんサバイバーに寄り添ってくださり、経験や想いを共感し理解してくださり、その真摯な対応から、日頃から社員一人一人に「共同化」の精神が養われていることを感じました。

医薬品製造についての概要紹介

座談会の後は、「医薬品製造についての概要紹介」のレクチャーがあり、 製薬について全くの素人の私たちに薬の製造工程について簡単に説明してくださいました。
「薬は人の口に入るものなので、人の命と繋がっている」 そのため、常に安定供給 を維持するために徹底した管理体制下でのオペレーションで運営されていることを知り、「自分の家族や愛する人が服薬することを想って、品質維持に努めている」 という信念を受け取りました。

エーザイの製薬を知る~工場見学(製造部門&品質管理部門)

最後に、私たち3人がとても楽しみにしていた工場見学では、原薬製造の工場を見学させていただきました。工場を見学するにあたり、上から白い防護服、防護メガネ、頭には衛生キャップの上にヘルメットを被り、工場に入ると専用の靴に履き替え、念入りに手洗い消毒を行った上で手袋を装着するといった徹底された衛生管理が行われていました。

工場では、エーザイ社員さんに原薬の製造工程と機械について説明いただきました。私たち3人にとってはハイクオリティな設備等々、見るもの全てがめずらしく、私たちの日常とかけ離れた異空間に圧倒されました。

工場見学の次に、品質管理部門も見学させていただきました。工場製造された原薬の品質管理の機械や作業などについて説明をいただきました。品質を維持するためのあらゆる試験が行われている作業空間をガラス越しに拝見させていただき、薬が出来るまでの膨大な作業工程を垣間見て、徹底された品質管理が行われていることを知りました。

製造部門および品質管理部門を見学させていただき、説明を受けたことで、エーザイ社員さんが日々、薬の製造という仕事に誇りを持ち、薬を服薬する患者さんのことを想い丁寧に誠実に仕事に向き合っている姿を目の当たりにしました。

心に刻まれた「共同化」の一日

今回の「講演会・座談会」の感想は、

かずみさん:

今でも心に深く残っている時間です。製造チームの皆さんの丁寧な語り口調や眼差しから伝わる仕事への情熱と誇りに胸を打たれました。医薬品製造の上流工程や品質管理部門を見学し、鹿島工場が世界中の患者の命を支えているというスケールの大きさにただただ圧倒!また、安全性だけでなく安定供給の重要性を知り、それを「(患者が)意識せず過ごせることが理想」と語られた社員の方の言葉に、静かに命を守る力強さを感じました。ご一緒したかおまるこちゃんのスピーチからは、同じ病を経験しても感じ方や受け止め方は人それぞれであることを教えられ、患者同士でも互いを思いやることの大切さを改めて胸に刻む一日となりました。貴重な機会を本当にありがとうございました。

かおまるこさん:

1日を通してがんサバイバーの治療を支える現場の方々の情熱に触れ、胸が熱くなる時間でした。講演中は多くの方が真剣に耳を傾けてくださり、がんサバイバーの声が確かに届いていると実感しました。工場見学では、徹底した品質管理と安全確認がされていることを知り、もっと多くの方にこの事を知ってもらいたいと感じました。医療に関わる人と患者が互いを理解し、コミュニケーションをとっていく事で、より希望の持てる未来へと繋がっていくことを願っています。


エーザイ社員さんに私たち患者の経験や想いを受け取っていただき、私たちはエーザイさんの仕事に対する直向きな姿勢、患者への想いを感じた「共同化」の一日でした。

私たちを温かく迎えてくれたエーザイ社員のみなさまに本当に感謝申し上げます。貴重な経験をありがとうございました。

エーザイWEBコンテンツ 乳がん・婦人科がんの情報コーナー「レディルナガーデン」
https://ladylunagarden.eisai.jp/

エーザイ株式会社コーポレートサイト
https://www.eisai.co.jp/

(文:一般社団法人ピアリング淀川知子)

SNSでフォローする