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「オストメイトの集い」笑顔で踏み出したはじめの一歩

2025年7月13日、小さな、しかしこれまでにない素敵なイベントが、大阪で開催されました。その名も「聴こう学ぼう語らおう~オストメイトの集いin大阪~」

大腸がんなどの病気の治療のため、腸の切除手術を行い、ストーマ(人工肛門)を造設してパウチを装着し生活しているオストメイトの方達、そしてその家族や支援者の集いです。
この集いは特に、患者支援団体等に所属していない方、これまで同じ立場の方とつながる機会の少なかった方にも、気軽に参加していただくことを意識して、企画されました。

「ストーマと生きる上で、大切な情報を学び、仲間とつながり、そして何より、生活を楽しんで欲しい」

そんな想いを、このイベントの企画をともに担当したオストメイトの佐々木香織(カロリーナ)は語ります。

さて、どんな集いが催されるのか。
期待半分・不安半分のお顔で会場に集まった皆さんでしたが・・・

第一部:講演

最初のプログラムでは、北里大学 健康科学部 教授・SIUP(ストーマ・イメージアップ・プロジェクト)のメンバーであり、WOCナース(皮膚・排泄ケア認定看護師)として長年オストメイトの皆様を支えてこられた松原康美先生に「実態調査から知るオストメイトの現実」をテーマに講演いただきました。

この講演では、頷きながら、熱心に聞き入っている様子の参加者の皆さんが、印象的でした。

講演を聴いたオストメイト、みーさんのレポートです。

「北里大学の教授でいらっしゃる松原康美先生が、オストメイトの普段の生活で起きることに対しての心理的、物理的困難の調査結果や、パウチ使用のトラブルや匂いの問題などなどをお話ししてくださいました!
普段オストメイト同士でも会話に出ないような踏み込んだ内容が多くてとても勉強になりました!

中でも一番印象に残っているのが、パウチの交換が自力で出来なくなる心配、不安について触れられていたことです。
これは私がオストメイトになったときから常々不安に思っている事で、老いや癌だけではなく、例えば指がうまく動かせなくなったり、頚椎を痛めて下を向けなくなったり(リアルに今頚椎を痛めてリハビリの日々)年を重ねると不自由になることが増えるんじゃないかなって。
目が悪くなってパウチをお腹に張る時にずれちゃったりとか・・・、あるかもしれないですよね・・・。
そういった不安な声もちゃんと拾って課題として取り上げてくださっていました。」

一緒に聴講されていた、みーさんのご子息も、本当に真剣に、松原先生のお話に聞き入っている様子が印象的でした。

松原先生が、
「ストーマ保有者に正しい情報発信をしていきたい、みんなが一緒に暮らしやすい社会になるように・・・!」
と元気に語ってくださる様子に、多くの方が励まされたご講演でした。

※アーカイブ動画視聴はこちら

第二部:「当事者が語る!明るく楽しいトークセッション」

さて、第二部は、オストメイト当事者で、本イベントのモデレータである佐々木香織(カロリーナ)とオストメイト当事者によるパネルディスカッション。

テーマに「みんなどうしてる?障害者手帳の活用や、お得な情報集めのこと」と掲げて、これまであまり語られてこなかった、お金のことや、オストメイトになってからの楽しみ・失敗談など、当事者がざっくばらんに自己開示して語り合う、貴重な時間となりました

パネラーとして登壇もしたみーさんのレポートはこちらです。

「まず冒頭では、カロリーナさん自身がオストメイトになった時のお気持ちを話されていました。カロリーナさんは、一時ストーマ閉鎖後の排便障害が耐えられないくらい辛くて、永久ストーマに変えたため、痛みから解放されて幸せだった!くらいのお気に入りようでした!
そしてカロリーナさんが実際に、障害者手帳を使って横浜から大阪に旅行した際の、手帳を使用したときとしなかったときの比較なども紹介されていました!

さて、ここから私も登壇させていただきました。

オストメイトは2人で、日本オストミー協会の、秋山聖一さんと、私。
それから「障害者手帳で行こう」というサイトを立ち上げ運営されている
一般社団法人シシン 佐久間雅美さんの3名と、カロリーナさんでパネルディスカッションを、行いました!

秋山さんは、登壇初めてとのことでしたが、なんの!マイクを握った瞬間から、トークの上手さにすっかりたじろいでしまった私です。ちょっと脱線。

この後私も自己紹介させていただいたのですが、中学生の息子も会場の後方で見てくれていて、なかなかない経験でした。
思春期で反抗期の息子にもなにか感じでもらえたらいいなぁ!なんて。
実は息子は、このイベントにはもともと「行きたくない」と言っていたのです。
理由を聞いたら、
「ママの病気を実感するようなことをしたくないから。」
とのことでした。

すごく気持ちわかりました。辛そうにしていた私の姿を思い出して、不安になるかもしれないし・・・無理に参加する必要ないなと思って。
だけどやっぱり親が挑戦する姿もみせたいなと思い、再度、息子と話をして納得してもらって会場に連れてきた流れがあったのです。
でも来てみたら、息子も最初の松原先生のお話からきっちり聞いていて、楽しかったと言っていました!

話は戻りますが、「障害者手帳で行こう!」のサイトは私の中では遠出するときは必ずのぞいていたサイトだったので、佐久間さんとご一緒できて感激でした!

みーさん、多感な年頃の息子さんが、「楽しかった」と言ってくれたとは、嬉しいですね。
頑張ってきたママの姿がきっと、とても誇らしかったことと思います。

※アーカイブ動画視聴はこちら

第二部の〆として、このイベントの開催を支援してくださった、コロプラスト株式会社の社会保障担当部門の濱本英喜さんから、「日常生活用具給付制度の自治体間格差」のお話がありました。

お得情報の交換など楽しく聞き入っていた会場の皆さんですが、一番大事なストーマへの給付金のお話にも、ここでしっかりアンテナが立ちました。

過去30年近く、日常生活用具補助の給付基準額が見直しされていない現状や、自治体によっての給付基準額の差、特に西日本の自治体は給付が多くないことなど、具体的なデータを見せていただきながら、自分達の置かれた現状をしっかり認識することができました。また現在、日本オストミー協会の皆さんや、個人のオストメイトの方が、コロプラスト社と協働して、自治体への基準額の値上げや、給付対象品目の拡大を要望する改善活動に取り組んでいることもわかりました。当日は、当事者として、ぜひ同様な活動に協力したいという方も複数手があがり、貴重な情報交換の場になりました。

第三部:グループトーク「語らおう!オストメイトの困りごと」

そして最後は、参加者による1テーブル5人程度のグループに分かれてのおしゃべりタイムです
こちらもみーさんのレポートで、盛り上がりを感じてください。

「私のグループは、スタート前、というか席につくなり皆であれやこれやと話していたこともあり(もちろん初対面)、第三部がスタートする頃には、台本のトーク内容は大体終えてしまっていたため、全員で尽きない話をして終わりました!
ファシリテーターデビューとしてはお粗末でしたが、終わったときに皆さんたくさん喋ってとても楽しかったと言っていただけたので、まあ、ほっとしました!
私のグループだけでなく周りのグループも、男性が多いグループも皆さんおしゃべりされていて、主催者ではないのですが、勝手に嬉しくなったのを覚えています。
というわけで約40分のおしゃべりタイムは、一瞬で終わりました!」

共通の経験をされてきた方同士って、初めての集いでも、ほんとうに同窓会のように盛り上がりますね。私も「いままで一人で悩んでいたけれど、今日はたくさんお話できて嬉しかったです」と参加者の方にも声をかけていただき、スタッフとしても、とても嬉しい気持ちでした。

そんな雰囲気をまとった、集合写真です。

みーさんからは

「オストメイトはやはりマイノリティな世界ですから、逆に伸び代もたくさんありますね!
まだまだ良くなる便利になる、コミュニティももっと広がる、男性ももっと参加できる、そんな期待感膨らむイベントでした!」

との感想をいただきました。

なんだか、オストメイトの明るい明日が広がっている、参加者みなさんが、そんな朗らかな気持ちを持ち帰ることができたのではないかと思います。

さて、今回は、「オストメイトの集い」が笑顔で踏み出した第一歩。
この先も一歩一歩と歩みを進めていけたらと思います。

このイベントをサポートしてくださったコロプラストAccess to Healthcareプロジェクトに感謝を込めて。

ピアリングブルースタッフ 上田のぶこ

講義とパネルディスカッションの様子が動画で視聴できます。ぜひご覧下さい!

実態調査から知るオストメイトの現実【聴こう学ぼう語らおう〜オストメイトの集いin大阪より】
講師:松原康美先生(SIUP)
視聴はこちら

オストメイト当事者が語る!明るく楽しいトークセッション【聴こう学ぼう語らおう〜オストメイトの集いin大阪より】
視聴はこちら

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