がん治療を続けながら筆を握りつづけるピアリング会員のまいちさん。
まいちさんの作品一枚一枚に込められた想いは、同じようにがんと向きあう日々を歩む私たちに温かなエールを届けてくれます。今回は、そんなまいちさんが筆に託してきた想いや、描くことが彼女にとってどんな支えになっているのかをお伝えします。

今、どんな時間を一番大切にされていますか?
ーー頭が冴えてきて、いろんなことに集中できそうな時をつかまえようとしています。
病気と向き合う中で日々感じることや気づいたことはありますか?
ーー見過ごさないこと、自分で気が付かないふりをしないことを大事にしようと思っています。我慢、忍耐も大切だけど、それが過ぎると自分がほんとに何を感じているのか分からなくなってしまう。ネガティブな気持ちも包み隠さず感じ取れるように気をつけようと思っています。
病気と向き合う中で、大事だと思うようになったこと、逆に、これまでは気にしていたけど、それほど重要はないと思うようになったことはありますか?
ーー自分の好きなように相談していいのだなと思うようになりました。相手を優先させるために自分の気持ちを黙って押し込めていては、話し合いの場にもならないのかもしれない。自分を賢い人や物分かりの良い人に常に仕立てる必要はないのだと思うようになりました。
痛みや不安がある時、どのように心を整えていますか?
ーー水の中に投げ込まれたら、もがくより丸まってじっとする方が、やがて静かに浮かんでくるイメージでいます。気持ちはお天気と一緒で、不動ではなく流れていくものだと思っています。
ただ最近は、もっと積極的に痛い自分の気持ちを訴えるのも、大切かもしれないと思うようになりました。
病気のことはピアリングでなんだかんだと呟いて、パワーをいただいていて、ほんとにありがたいです。いつか誰かにご恩返しができればいいなと思っています。

絵を描くことは、今のまいちさんにとってどんな意味を持っていますか?
ーー自分はほんとに取り柄のない人だともともと自信のない人間なのですが、絵に限らず一生懸命にならなければ何事も向こうから歩いてこないものだと、思うほうです。ひとつくらい人生で得意なものを欲しいなら、自分から取りに行くほどの頑張りをしないとなぁと日々思っています。
この10年で、描くテーマや色使いに変化はありましたか?
ーー絵を始めた頃から数年はただ描く行為を楽しんで上手くなろうと思っていましたが、作家活動をはじめようと思った3年ほど前から、人に作品を見せることが前提になり、他人の目を意識して絵作りしています。つまり、自分だけのために描く絵とは少し違ってきたのかと思います。
描いている時、どんな気持ちになりますか?
ーーノリノリで気分が高揚する時も少しはありますが、たいていは筆や絵の具の使い方の今後を探りながら冷静な気持ちで描いています。
これまでで「描けてよかった」と感じた作品を教えてください。
ーー『野葡萄を摘んでいて』、『懐かしい未来』のこの2枚は作家活動をはじめようと思った初めの方のキリッとした気持ちを込められた気がします。あと、2025年の夏にNYのグループ展に出品した少女2人の踊っている二部作の大きめ作品2枚組も、チャレンジングで達成感がありました。
ピアリングオフィスに飾ってある作品で、特に思い入れの強いものは?
ーー『野葡萄を摘んでいて』です。つくづく時間がかかった絵でしたが、いつ見てもちゃんと応えてくれる気がします。
まいちさんの作品には「鳥」が沢山でてきますが、「鳥」のどんなところが好きですか?
ーーやはり人にはできない飛べる体の持つ軽やかさや繊細さが魅力的で、つい描いてしまいます。飛べる、羽ばたけることはここでは無いどこかへの移動を容易にしてくれることでもありますし、夢を感じます。
まいちさんの描く絵画の魅力について考えていました。
ーーたくさんあるのですが、一つは「場所」です。『光、また光』はどこか北峰の国だろうか?『私、飛んでる!』はまいちさんの住む街の近くの景色だろうか?美しい野葡萄はまいちさんの心の中でをつけているのだろうか?とあれこれ考えては楽しんでいます。
まいちさんが描く情景は、どこからやってくるのでしょうか?
ーーなんとなくこの辺りという大雑把な括りはあっても、そこがこの世界のどこであってもいいと思って描いています。見た人がここはどこかなってあれこれ悩んでくれるのも、逆にすぐどこだか分かられてしまうより、なんだか嬉しく、その人自身の気に入った舞台に設定してくれたら嬉しく感じます。
子供の頃から、絵をかいていましたか?絵のほかに熱中していたことがあれば教えてください。
ーー学校の授業など機会があれば楽しんで絵を描いていましたが、それ以外に自主的にはあまり描いていませんでした。
ピアノのお稽古を下手ながらも頑張っていたと思います。でもそのくせ、幼いころからいつかは本格的に絵を描きたいと、人知れず密かに心中に抱えていたのも事実です。
まいちさんの今の形のセンスを形作ったものは何ですか?お気に入りの小説や詩、好きなアーティストやら影響を受けた人がいれば、ぜひ教えてください。
ーーバレエや体操など身体を使う芸術に憧れていましたし、幼い頃から身近な自然に目を向けていました。小説なら海外の『大草原の小さな家』の原文や『赤毛のアン』の原文はシリーズで読んでいました。
大学受験時に建築学部を選びましたが、試験科目にあったデザインの基礎やデッサンの勉強をしたことは絵を描く上でも大きく影響を受けました。また社会人になってクラシックバレエを14年ほど習い身体的な表現を学んだことも、今の創作活動に結びついていると思います。バレエは自分の体を資本にするという点で、いつも満足のいかない表現で終わってしまうのが残念で、やがて絵をえらびました。
腕と頭を使えば何とか表現したいことができると思ったからです。

人生の中で絵以外に大切にしてきたことはなんですか?
ーーその時その時に応じて、人様に誇れるような生き方をしていたかと思うと全くの疑問ですが、自分の最大限の力でその場をやり切ろうと頑張ってきたことは一貫していると思います。ついつい人に聞くより、自分のキャパシティのなかで解決しようとしてしまうことが、いいことなのかそうでないのかわかりませんが、オリジナリティを出すという点では特徴がでるのかもしれません。
これから描いてみたい、あるいは伝えたいテーマはありますか?
ーー体どうしたらこんな表現をおもいつけるのか、分からないようなことができたらいいなと思います。自分でもワクワクしながら掛けたらそれが一番幸せだと思います。いつもそうなるとは限りませんが、目指しているところではあります。
自身の絵をこれからどんな人に見てほしいですか?
ーーあらゆる年代、性別、人種、地域の人々に見てもらいたいです。
なるべく英語のキャプションを付けてSNS発表しているのも、心を広く的な世界に向けている姿勢を表しています。
「生きる」ことについて、今改めて感じることは?
ーーやはりきれいごとではないなということでしょうか。目を背けたいこともあるけど、そこも生きることの一部みたいです。体、心の痛み、喜び、全てひっくるめて生きることなのだなと思います。
絵を通して。ピアリングの皆さんに伝えたいメッセージはありますか?
ーーいつも見てくださって、何かしら声をいただけるのはとても嬉しく、励みになっています。その方にとっては一瞬のことであっても、私にはとても大きく響いています。ほんとにありがとうございます。


今年2月、ピアリングのオフィスは横浜市都筑区の新オフィスに引っ越しをしました。そこには、まいちさんが描いてくださった美しい油彩画を飾り、オフィスへのお客様を迎えてくれています。

小鳥や女の子が描かれた優しい絵は見ているだけで気持ちが和む、温かな色合いの作品に仕上がっています。

また、私たちの繋がりや支え合いを表現しピアリングへの想いが込められた特別な絵「一人じゃないよ」もオフィスで見られます。
ピアリングのダイアリーでもまいちさんが一部をご紹介してくださっていますが、実際の絵の美しさは、やはり直接見ていただくのが一番です。色の深み、筆の跡、そしてまいちさんの想いが伝わってくる温かさは、実物だからこそ感じられるものです。

まいちさんはダイアリーの中でこう語っています。
「ピアは人と人との繋がりで、どんどん素敵なことが起こって行きますね。ほんとにピアは温かい。その温かさ、少しでも絵から感じて頂けたら嬉しいです✨」
その穏やかで真っ直ぐな想いは、温かな支え合いの場が生み出すぬくもりと、そこに集う人々の優しさを映し出しています。そして筆を通して届けられるその温かさは、私たちにとってかけがえのない宝物です。
互いを思い合い、支え合いながら、がんと向きあう日々を一歩ずつ大切に重ねていけたら——。そんな願いを胸に、これからも私たちは歩んでいきます。
皆さまにも、ぜひまいちさんの絵を実際に見ていただきたくて、オフィスを開放するオープンオフィスの日を設けることにしました。
まいちさんの作品に込められた優しさに触れて、私たち仲間との時間も一緒に過ごしていただけたら嬉しいです。
オープンオフィスの詳細はこちら
https://peer-ring.com/posts/132419