ピアリング会員の和美さんが、企業にてご自身の治療経験をお話するイベントに登壇されました。その様子をご本人からのレポートとしてご紹介します。
2025年7月3日、都内某所にて、ステージ4の乳がん患者として講演と座談会に参加させていただきました。
医療用医薬品は一般向けのテレビCMが禁止されているため、OTC薬(一般用医薬品)ほどブランド認知が進まず、多くの患者さんは薬の“効き目”は覚えても、“誰が作ったのか”までは意識していない気がします。私は、医療系人材紹介会社に勤務していた経験があるので、どこの薬なんだろうと日頃から気になってしまうほど、製薬企業の存在を身近に感じているつもりでした。
そんなこともあり、製薬企業の社員さんの前でお話できるのは、とっても誇らしい気分で臨みました。とはいえご参加くださる方々がマーケティングやMRとして、日々プレゼンテーションやコミュニケーションを極めている“伝え方のプロ”なので気おくれしつつも、「話し上手は聞き上手、私が経験してきたことはプレゼンじゃなくて“日常”だ!」と開き直って、肩の力を抜いてお話しました。
暗い話だけではなく、たくさん笑って生きている「今」の姿を届けたいという想いから勝手にテーマを「笑い9割、涙は少しだけ」とつけました。本当に笑って欲しいと思い、小ネタを仕込んでいたので、ちょっと笑ってくださった瞬間には「よっしゃ」と思ったのは内緒です。
講演では、乳がんの告知、抗がん剤や分子標的薬の治療、それに伴う副作用、走ることやSNSでのつながり、そして治療を支えてくれた薬のこと、これからのことなど、実際の生活と気持ちを自分の言葉でお話ししました。
登壇後、ご質問をいただきましたが緊張の糸が切れたのか、何を回答したのかよく覚えていません…
座談会で「薬の作用(効果)と副作用のどちらを気にするか」という質問があり、そこで、私は長い間、副作用のほうに目が向いていたことに気づきました。効果があって当然という思いが心の奥にあったからです。しかし、改めて「薬はいずれ効果がなくなる」という現実に気づいたとき、自分の中で何かが大きく揺さぶられました。これまで効いてくれた効き目がどれほど貴重だったか…頭をガゴンと叩かれた気がしました。
また、これからリリースを検討されている広告戦略に意見を聞いていただけるなんて、本当にときめきました。もしかすると、この先、多くの人の目に触れる広告に、患者としてのリアルな声がほんの0.1ミリでも入っているとしたら、それだけでとても嬉しいです。
今回参加させていただいて、誰かがどこかで“ちゃんと知ろうとしてくれている”ってことに、意味があるなと感じました。社員の方からの感想に「製薬会社で働いていて本当によかった」というものがあったというのを伺って、“患者の声があることで、より良い医療がつくられていく…”そんな循環が回るなら、それはとても健全なことではないでしょうか。
製薬企業と患者が、直接顔を合わせて対話できることの大切さを、改めて実感した2時間でした。
病気に向き合う私たちの生活のそばに、薬を作る人の想いもある。そんなつながりを感じられたのは、私にとっての希望でもありました。
貴重な機会をありがとうございました。
そして、がんという言葉が世界からなくなることを心から願っています。