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エーザイ株式会社とピアリングの「共同化」。共に時間を過ごし、想いを共有できた貴重な「講演・座談会」

「共同化」­–共に時間を過ごすことが大切

ヒューマン・ヘルスケアのエーザイ

テレビCMでこのキャッチフレーズを耳にしたことはありませんか?製薬企業のエーザイ株式会社では、社員一人ひとりが患者の傍らに寄り添い、患者の目線で考え、言葉にならない想いを感じ取ることが重要とし、すべての社員が業務時間の1%を患者と共に過ごすことを推奨しているそうです。

それは「共同化」と呼ばれています。共同化を通じて得られた気づきからは、具体的な計画が立てられ、様々な活動が実践されていきます。活動の幅は、お薬だけではなく、予防医療や日常生活へのアプローチも。自動車・IT・保険業界などあらゆる産業と手を組んで、新たな挑戦をされています。

この度、「共同化」の一環として、「婦人科がん」の「講演・座談会」を行いたいと、ピアリングにお声かけを頂きました。

2024年9月26日、エーザイ鹿島事業所を、ピアリングのメンバー4人が訪ねました。製薬企業で実際に働く人々と私たち患者たちが、本当に出会い、共に時間を過ごす……一体どんなことが起こるのでしょうか?

ピアリング会員Mi-Yu、スタッフみさと、ミサ、ピアリング会員ひなにゃん

「与えられたカラダで生きること」

ピアリングネームひなにゃんこと片口直美さん(卵巣がん経験者)が一人目の講演者です。

とても印象的だったのは、がんの原因となった子宮内膜症の経験談です。ひどい生理痛で「1か月のうち元気に活動できるのが1週間だけという日々が20年間続いた」というのです。何軒もの婦人科に行きましたが「子宮内膜症だからしょうがない」「仕方ない」としかいわれなかったそうです。

ピアリングの仲間の言葉、『医者の「仕方ない」と患者の「仕方ない」は違う』を引用して片口さんはこう訴えました。

「治療という希望を「仕方ない」の一言で医師が終わらせてしまっては、患者の未来は閉ざされてしまいます。「仕方ない」という言葉は、病気を受け入れて、納得して初めて「仕方ない」と患者から出る言葉だと思うのです。」

薬に助けられて今を生きています

その後20年目にして、子宮内膜症を理解・コントロールしてくれる医師と出会い、生活が輝き始めた片口さんでしたが、またしても困難がやってきました。大好きな介護の仕事を手放すことになる「がん告知」。そのがんは約1%の発症率の「子宮内膜症からのがん化」でした。

命を落とすかも?と思うほど激しい抗がん剤の副作用、ウィッグで出掛けるのは緊張と暑さが大変ということを知った脱毛体験、治療が終わって3年たった今も続く後遺症のことなど。どれも経験した人にしかわからない出来事を淡々と語る姿には、我慢強く一生懸命生きてきた片口さんの人柄がにじみ出ていました。

エーザイは「副作用で苦しむことのないがん治療の実現」を目標として掲げています。それについて「待ち望んでいます」とエールを送り、最後は社員の皆さんへ感謝の言葉で締めくくりました。

「私たち罹患者は薬に助けられて今を生きています。その事をお伝えできる機会を頂きまして大変嬉しく思っています。」

「同世代の患者へ発信!繋がる場所は自分でつくる」

鮮やかな緑色のドレッドヘアに鼻ピアス、派手なファッションに身を包み「こんな人がこちらに来たことはないでしょう」と茶目っ気たっぷりに自己紹介をしてくれたのは二人目の講演者、シンガーソングライターのMi-Yu(ミーユ)さん(子宮頸がん経験者)。講演スライドにも、オリジナルソングを入れたミニムービーを挿入するなど、旺盛なサービス精神で聴衆を引きつけていきます。

麻酔薬が合わず手術直後には「めまい・吐き気・痛み」に悩まされたこと。自分で排尿できなくなり、自己導尿がなかなかうまくできずに辛かった日々。何を嗅いでもプラスチックを燃やしたような匂いだった味覚障害。3回目の抗がん剤投与で重度のアナフィラキシーショックがおこり、治療を続けられなくなった不安。

今年の1月にがん告知されたばかりで、まだ生々しい体験の数々であっても、明るく話す様子は頼もしく、これからの活躍が期待されます。

性交渉のことも前向きに話し合える場を

子宮頸がんはAYA世代(若年)に多く、他の婦人科がんとは、治療内容も頻発年齢も異なります。つまり苦労のポイントが違うのです。しかし、それを社会発信している人は少なく、ピアリングの中でも若い子宮頸がんメンバーは、なかなか表に現れませんでした。

Mi-Yuさん自身、同年代の子宮頸がん患者に会いたくて行動をおこした結果、ピアリングに出会い、自分でオフ会を開催することになりました。「ダイレーター」等を使った「腟ケア」についてもどんどんオープンに情報発信していきたいと考えているそうです。今後、AYA世代の子宮頸がん患者が交流できるオフ会が、大きく広がることを応援していきたいです。

「同じAYA世代やがんを経験されている方などが、Mi-Yuの出るイベント会場に来ることで繋がれるきっかけをつくりたい!シンガーソングライターとして全国飛び回っている私の使命だと勝手に思っています」と締めくくりました。

講演後の座談会が育むものは

講演を聴くだけではない。その後の座談会の交流こそ「共同化」に欠かせないものです。講演を終えたスピーカーが、エーザイ社員の輪に入ると、次々と感想や質問が飛び交います。スピーチの内容を、まるで自分のことのように受け止めて質問をしてくださる姿勢には、とても励まされました。

「自分ががんになったら、受け止めることができるだろうか?と真剣にいってくれた方もいました。卵巣の検査を医師に相談してみます…という女性社員さんもいました。嬉しかったです。」(片口さん)

「オンラインの質疑応答で富山在住の方から質問を頂き、テーブルにも富山出身の方がいらっしゃったので、親近感。さすが薬売りの富山。同郷の方に講演を聴いて頂けたのが嬉しいです。」(Mi-Yuさん)

「若い社員さんから『抗がん剤をつくっていることに迷いというか、疑問というか……副作用がとても強い薬が本当に患者さんのためになっているのか?が、なかなかわからない。副作用で命を落とすかもと思ったのに、一方で薬に助けられて生きているとも思うのは、どのような感情なのか?』という質問を受けました。」(片口さん)

エーザイの薬が生まれる場所で

ピアリングからは2人のスピーカーに加え、モデレーター望月ミサ、スタッフ佃美紗都も同行しました。ピアリング婦人科リーダーの望月は、ピアリングの活動を紹介。婦人科がんの基礎情報や、子宮頸がんワクチン問題、HPVは中咽頭がんなど男性のがんにも関わることも発表しました。

佃はピアリングの最新の自主調査「がん治療に伴う副作用の日常生活への影響に関する調査」について紹介しました。沢山のピアリングの声を届けたい!という想いをのせて。

その後、4人はエーザイ社員のエスコートで、工場見学へ。私たちを支えている抗がん剤がここの工場でつくられているのです!薬品が流れていない休止中の製造ラインへの入室とはいえ、厳重に防護服を2回着替えて入ります。厚いグローブを重ねて動かしにくい指先で作業の真似っこをしながら「決して入ることのできない場所で、こんな体験ができるとは!」と。この感動はピアリングにとっての「共同化」です。エーザイの薬が生まれる現場に触れて、私たちピアリングももっと社会へ貢献できることはないだろうか?と考えるきっかけとなりました。

3ヶ月前に経過観察に入ったばかりのMi-Yuさんは「今年上半期での苦しい経験が、下半期でこんなふうに役に立つ日がくるなんて思ってもみませんでした」と目をキラキラさせて感想を語っていました。

社食のランチから始まり、半日以上を過ごしたエーザイ鹿島事業所ともお別れする時間がやってきました。エーザイ社員参加者全員が私たちの乗るタクシーの見送りに並んで、いつまでも手を振り続けてくださったことが、素敵な思い出として刻まれました。

「このような機会をつくってくださったエーザイさんに感謝致します。これからも私たちの経験を繋げ、がんに向き合いながらも自分らしく豊かに過ごせる社会を創るために活動を続けていきたいと思います。」(ピアリング運営代表 上田のぶこより)

ピアリング会員へお薦め

エーザイWEBコンテンツ 乳がん・婦人科がんの情報コーナー「レディルナガーデン」
https://ladylunagarden.eisai.jp/

エーザイ株式会社コーポレートサイト
https://www.eisai.co.jp/

文章:望月ミサ(一般社団法人ピアリング理事)

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