ピアリング顧問ドクターの鈴木瞳先生からピアリングに届いたコラムをご紹介します。
今回は「ホルモン療法」についてです。現在治療をしている方、これから治療が始まる方はぜひ読んでみてくださいね。
ホルモン療法の副作用について
乳がん再発のリスクを抑えるために長期間にわたる内服や注射が必要なのがホルモン療法です。
更年期障害に伴う様々な症状が知られており、その他にも関節痛・筋肉痛、骨密度の低下などあらゆる副作用が認められています。ただ、症状の発現や強さには個人差があり、ほとんど自覚症状なく10年間の内服を継続できる方もいます。
ホルモン療法は、あくまでも再発予防目的の薬物療法です。「ずっと飲んでいても再発すること」もあれば、「全く飲まなくても再発しないこと」もあります。そのため、今ある日々の生活の質を極度に落としてまで無理に治療を継続する必要はないと考えます。
一方、ご自身がホルモン剤の副作用と思っている症状でも、実は他の疾患や他の内服薬が原因となっていることもあります。自己判断でホルモン剤の副作用だと決めつけることは危険なので、ささいなことでも主治医に相談して、治療の継続について決めていきましょう。
タモキシフェンと婦人科疾患
タモキシフェンの内服中は、子宮内膜癌のリスクが増加する可能性が報告されており、主治医から内服中の定期的な婦人科受診を指示されることがあると思います。
しかし、ガイドラインでは、定期的な子宮体癌検診は、子宮内膜癌の早期発見に有効であるというエビデンスはなく、さらに子宮に対してより侵襲的な検査を行うことが多くなるなどの不利益を考慮し推奨されていません。タモキシフェン内服中の子宮内膜癌の罹患リスクは55歳以上の女性で認められていますが、54歳以下では有意差がありません。閉経後の女性は、タモキシフェン内服中の子宮内膜がん罹患リスクをよく理解した上で、不正出血などの症状があればすぐに婦人科を受診することが重要です。子宮内膜癌の早期発見目的の定期受診は必須ではありません。
しかし、タモキシフェン内服中は、おりものが増えたり、生理的に卵巣腫大がみられたりすることもあります。これらの症状が気になる場合には、婦人科受診をおすすめします。