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【ドクターズコラム】がん罹患後の食生活について

ピアリング顧問ドクターの鈴木瞳先生から、がんと向き合っている皆さんへのメッセージが届きました。

がんの告知をされたら、食生活まで変えた方がいいの? 今食べているものは体に悪い? など、ピアリングではこれまで、食事について心配のする声や、食事療法について知りたいという声があがっています。
ピアリング編集部では、瞳先生に、ピアのみなさんの声をお伝えし、本コラムを執筆いただきました。

がん罹患後の食生活について

皆さんこんにちは。今回は、乳がん罹患後の食生活についてお話いたします。
診断後も治療後も、がんが再発しないためにはどんな食事がよいのだろう?
「これは食べた方が良い」「あれは食べたらダメ」そんな話を小耳にはさんでは、ついつい不安になってしまう。そんな方も多いのではないでしょうか?

日々、私の外来でも食生活への疑問や不安をよく耳にします。
身体に直接入り、血となり肉となる食事は、とても大切です。しかし、何といっても「食事は美味しく楽しく!」これは、がんであってもそうでなくても同じだと思います。

よく皆さんからあがる声を取り上げつつ、最近の研究結果をお伝えします。

乳製品って食べたらダメなの?

最近の研究では、乳製品全般を多く摂取している人は、摂取していない人に比べて乳がん発症リスクがやや低くなることが分かりました。
また、乳製品の摂取量と再発リスクの関連については少数の研究のみですが、「関連性は明らかではない」と報告されています。乳製品はカルシウムを含む食品ですので、がんと関係なく乳製品を適切量摂取することで、女性に多い骨粗鬆症のリスクも軽減してくれます。

一方、乳がん発症・再発リスクとの明らかな関連が判明しているのは「閉経後の肥満」です。
よって、脂肪分の多い乳製品を摂取しすぎて肥満を招くことは本末転倒です。あくまでも適量摂取することが推奨されます。食事の中から除外する必要はありません。

ちなみに、牛乳の中で、無脂肪や低脂肪が良いのかについては明確な違いが立証されていません。

大豆製品の摂取は良いの?悪いの?どっちも聞くけれど。

豆腐や納豆などの大豆食品を沢山摂取することで、乳がん発症・再発リスクが低くなることが、最近の研究で判明してきました。
アジア人のみを対象としても、大豆食品を多く摂取した方が摂取していない人に比べて乳がん発症リスクが低かったと報告されています。

「大豆に含まれるイソフラボンは女性ホルモンと似ているからその作用で乳がんになりやすいのでは?」と心配されますが、実は大豆イソフラボンの構造は、乳がん治療薬であるタモキシフェンによく似ていることが分かっています。

そのため、むしろ乳がん予防効果につながるのではないかと考えられているのです。
最近ではイソフラボンのサプリメントも市販されていますが、こちらは乳がん発症リスクを下げる明確な効果は出ておらず、安全性についても証明されていません。よって、厚生労働省はイソフラボンサプリメントの服用は1日30mg以下にとどめるよう推奨しています。

できればサプリメントではなく大豆食品からの摂取がおすすめです。ちなみに私は、豆腐・納豆・豆乳が大好きで、毎日摂取しています。

糖質制限した方がよいの?

過去には、玄米食が大流行し、「がんになったら白米を食べてはいけない」と言われることもありました。
白米に比べて糖質が低く食物繊維が豊富な玄米には多くのメリットがあります。しかし、籾の部分が残っているため、消化吸収には白米よりも時間がかかります。100%玄米食に変えるのは、消化負担もかかりおすすめしません。

最近では糖質制限ダイエットが人気で、糖質offレシピも沢山出ていますが、例えば妊娠中の過度な糖質制限が胎児に悪影響を及ぼすことなど、少しずつ糖質制限が関連する研究結果も明らかになってきました。

一方、糖尿病は乳がん発症リスクを上げることが分かっているため、糖尿病治療中の方は定期的な乳がん検診が必要です。
糖尿病が誘因となる現代病はがんだけでなく脳血管障害や感染症のリスクともなりえます。
糖質を完全に排除する必要はありません。ですが、甘いものはほどほどに摂取し、血糖コントロールをしていくことは、乳がん再発リスクを下げることにつながると思います。
アスリートのような厳密な食生活をずっと続けることは、ストレスにもつながるのであまり良いとは言えません。

毎日の食生活にあまり過敏になり過ぎずに、色々な食品をバランスよく摂取することが、健康への一番の道だと思います。ぜひ毎日の食事の時間を楽しんでくださいね。

テキスト:鈴木瞳先生(一宮西病院・乳腺外科 ピアリング顧問)

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