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【ドクターズコラム】ひとみ先生への質問箱vol.2

【ピアリング顧問ドクター・ひとみ先生への質問箱】

前回好評だったひとみ先生への質問箱。今回もピアリングの仲間からの質問に、ひとみ先生が答えてくださいました! さて今回はどんな質問があるでしょう。治療中、少しでも快適な生活のお役に立ちますように。

Q1.「術後のテープって、いつ剥がせばいいの?」

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ののさんの質問  

傷痕に細かく張ってある術後のテープっていつ剥がせば良いのでしょうか? 傷跡に白いテープが細かく貼ってあります。

【ひとみ先生より】

白いテープは、多くの施設で使われている、3Mのステリストリップというものだと思います。表面の傷を付着させる目的で使うことが多く、傷が治るのを助けてくれます。「かさぶた代わりのテープ」と皆さんにお話ししています。皮膚と皮膚を寄せたいので、横一本の傷に対して縦に貼ってあることが多いです。数日で傷が治ってくると勝手に剥がれてきますので、自分で無理に剥がさなくても貼りっぱなしでOKです。術後数日程度経過し、シャワーで濡れてベロベロになったり、汚れてしまった場合には感染源になってしまうので剥がしましょう。このテープが早めに剥がれたからといって、傷がパックリ開いてしまうようなことはありませんのでご安心くださいね。ご自分では濡らして剥がすのがスムーズでおすすめです。

Q2.「抗がん剤中は手足は冷やさなくていい?そして抗がん剤点滴後の水分補給は?」 

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ひろりんさんの質問

抗がん剤点滴の後は、水は多めに飲んだ方がいいのでしょうか? 逆にむくんでしまったりするんでしょうか?

あと、手足を冷やしている方が多いようですが、看護師さんに相談したところ「お薬を末端まで浸透?させた方がいいので、冷やさんでもいいよー」との事でした。でも手の痺れ、爪の剥離など考えると…と迷うところです。

【ひとみ先生より】

★点滴で血管内に入った抗がん剤は、体の中で代謝されて尿と共に排出されます。点滴終了後に水分摂取をしっかりすると、尿の産生が促され、不要な抗がん剤は洗い流されて体外に排出されます。そのため、点滴後は適切な水分摂取が望まれます。

抗がん剤の副作用のひとつである「浮腫(むくみ)」は、抗がん剤そのものの影響で、血管外に水が溜まりやすい状態ができることによって生じるものです。そのため、抗がん剤点滴をしたからといって必ず起こるものではありませんし、点滴後に水分摂取を多くしたからといって悪化するものでもありません。

ただし、抗がん剤の種類や回数、体質によって、浮腫の程度も個人差があるので、水分摂取量を正しくコントロールする必要があるときも。症状が気になった場合は、速やかに主治医の指示に従ってくださいね。

★手足を冷却するのは、主に末梢神経障害を軽減させる目的であり、多くの施設でフローズングローブというアイテムが導入されています。神経障害や爪の障害を完全になくすことは難しいのですが、症状が軽減される場合も多いので、利用については各施設でご相談くださいね。

手足を冷やしたからといって、抗がん剤が全身に行きわたっていないということはありませんのでご安心ください。最近では、頭部冷却で脱毛が軽減される可能性についても研究が進んでいます。抗がん剤治療において、あらゆる副作用が軽減されるような研究がさらに進むと嬉しいですね。

Q3.「乳がんの手術後、指輪はしても大丈夫?」 

孫の手さんの質問 

乳がん手術後、術側の手には、時計、指輪など皆さんは、どうしていますか? 左全摘出のため結婚指輪ができません。しても大丈夫ですか?

【ひとみ先生より】

乳房全摘のみであれば、術後の生活で大きな制限はないことがほとんどです。腋窩リンパ節郭清を行っている場合には、術後、長期にわたって、リンパ浮腫の可能性が指摘されており、このリスクを減らすために術側の手腕の使用について制限されることもあります。

「長時間腕を圧迫する状況を避ける」、「疲れないように腕を休める」ことを意識するのが最も重要です。

しかし、最も怖いのは、単にむくむだけでなく、「感染」です。リンパ液がうっ滞した際に細菌感染を生じてしまうと、蜂窩織炎になって完治に時間がかかったり腕のみでなく全身に感染が広がってしまったりします。

例えば、ペットのひっかき傷や虫刺されなどの小さな傷から細菌が入ることもありますし、日焼けによる皮膚炎から生じてしまうこともあります。そのため、リンパ浮腫→感染を起こさないように日々注意することが大切です。具体的には、擦り傷や日焼けをしないように気を付けること、発赤や疼痛が起こった時にすぐ気付いて受診できるようにすることがとても大切です。

もともと指輪や時計で指がむくみやすいようであれば、サイズアップを検討したり、お出かけの時にだけつけるように心がけてみてもいいかもしれません。

ただつけるだけでは大きなリスクにはなりません。あまり過敏にならず、日常のおしゃれも楽しんでくださいね♪

Q4.「手術後お風呂はいつから?」

ちゅうたさんの質問

手術後、どのくらいでお風呂に入ることはできますか。 半身浴はOKと聞いているのですが、肩までしっかり湯船に浸かりたいと思います。術後どの程度経ったら傷に影響がないか教えて頂きたいです。

 
【ひとみ先生より】

術後の入浴に関しては各施設でおおまかな取り決めがあると思いますので主治医の指示に従ってください。大前提として「手術時の傷口が不潔になる可能性のある入浴はNG」となります。

密閉された創部で水が入り込む恐れがなければシャワー浴は可能です。

ドレーンチューブが入っている場合は、ドレーン刺入部が水につく可能性があるうちは入浴禁止のことが多いです。術直後でも半身浴はOKですし、表面の傷はおよそ1~2週間で治りますので、それからは肩までの入浴もOKとなることが多いと思います。ただし、湯上がりには清潔なお湯で上がり湯をして、常に清潔を保ってくださいね。温泉も、創部が落ち着けばいつでも入れます。放射線治療中も皮膚トラブルが生じやすいので、部分切除の方は放射線治療後、皮膚の赤みが取れてからが良いです。

また、血流が良くなりすぎて出血とか傷口が痛くなったりする可能性があるというのがあるかと思います。開腹手術の場合(特にがんのような大きな手術)だと体力的にもキツいと思うので、しばらくは入浴は控えてもらうことがあります。 傷のつきが良くて 体力的にも問題なければ、特に1ヶ月とか間を開けなくても入浴していいと思います。

また、温泉成分によっては皮膚炎がおこることもあるので、短時間の入浴にとどめ、上がり湯をしてくださいね。

そして、いずれの場合も個人差があるので、必ず主治医の先生にも確認してください。

抗がん剤治療中や術後はさまざまなマイナートラブルに悩まされがち。すこしでも楽しいことに目を向けて、一緒に治療を頑張っていきましょうね!

回答:鈴木瞳先生(一宮西病院・乳腺外科 ピアリング顧問)

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