「ガンになりたくなければ〇〇に気を付けよう」「〇〇な人はガンになりやすい」
テレビ、雑誌、公民館の健康講座…。私たちは、毎日のように、こんなフレーズを耳にします。
でも、その言葉は、自分自身が「がん」と診断される前と後で、まったく違って響きます。
先日出会ったseiさんのストーリー、皆さんはどう感じますか?
私は第三子妊娠時に、悪性リンパ腫と診断された。 早めに計画出産し、2週間後には治療に入った。放射線と化学療法を同時に受け、 記憶も飛び飛びな中、退院したのが昨年暮れ。 自宅療養になってからも、赤子の世話すらままならないくらいヨレヨレ。 食べられなくて、すぐ寝込んでしまう。 家族の誰よりも気をつけているのに、家族の誰よりも風邪をひく。 自分の想像を超えて、身体はダメージを受けている。 「少しずつ、焦らず、回復させていこう」 そう自分をはげまし、身体に良さそうなことを試したり取り入れたり、試行錯誤を重ねていた。
そんなつらい冬も終わり、春になって、行動範囲を広げていった。家事や育児、通院の合間に、自分のやりたいことも少しずつ取り入れつつあった。
そんな中、あるショッピングモールで、食生活に関する講座があると知り、興味深いな、と思い申し込んだ。 自分のためにも、家族のためにも、食生活を見直すチャンスだ!とも感じていた。
前評判によると、時間があっという間に感じる、楽しくて目からウロコな内容らしい。当日朝は生憎の雨だったが、私はウキウキドキドキして出かけた。 会場には、私くらいの年代のママさんたちが40人前後集まっていた。 主催の方とは、一度別のイベントでお会いしたことがあり、ご挨拶もした。
人気講座はスタート。講師は、軽快な口調で、時々ギャグも挟みながら話を進める。途中、参加者のグループトークもあり、和気あいあいとした雰囲気だ。
しかし、講座が進むに連れ、私の中で、モヤモヤした気持ちが湧き上がり、なんだか自分は、ここにいてはいけないような気がした。
なぜって…、講座の中で、
「○×な食生活をしていると、△△がんになりやすい。」
「▲×がんになる人の典型的な食生活は、・・・・だ。」
という表現が、沢山出てくるのだ。
…私が罹患した病名ではなかったが、聞いているのがしんどくなった。 モヤモヤの原因は、全くもって私自身の、講座内容の捉え方にあり、講師も、講座自体も、悪いわけではない。統計的には、そういうことが言えるのかもしれない。そして、世間的には、普通にそういうことが言われているのだ。
…出掛けてきた時のウキウキした気持ちはすっかりしぼみ、私は考え込みながら帰途についた。
後日、講座のHPを見ると「講座後のアンケートで、好評価が多かった」という報告のブログがアップされていた。 そこには、 「私は、△△がんになりやすい食生活をしていたことがわかり、ショック。改めようと思いました」 という感想もいくつかあった。
今回の経験、(大げさだが)病気をしたことで、なんだか社会的弱者?になったような気もした。
がんのような大病をすると(何が悪かったんだろう?)と考えない人はいないのでないだろうか。だけど、病院を選び、治療方針を決め、辛い治療を受け、不安を抱えながら…、それでも少し前を見て、今を生きようと踏ん張っている。
なった人にしか、わからない、そんなこと気にかけていたら、社会が回らないと言われるかもしれない。 しかし、『食生活のきほん』と題して講座をするのならば、 私のように、 立ち上がろうとしている病後の人が参加しているかもしれない、 という意識を持ってもらえたらな、と感じた出来事だった。
ピアリングレポーター:sei
小3女子・年長女子・8か月男子の母。2017年夏、妊娠後期に節外性悪性リンパ腫鼻型と診断を受け、出産後に治療を受ける。現在は治療がひと段落し、経過観察中。英語教師はしばしお休みして、今は育児の傍ら自宅で添削講師のお仕事で頭脳もリハビリ中。ピアリング主催のがんと就労セミナーでは司会を務めた。