もともと、日本人女性に乳がんは少なかったそうです。
有吉佐和子の「華岡青洲の妻」という小説では、クライマックスの1つに乳がん患者の手術シーンがありますので、昔から多かったのかなと思っていたのですが、そうでもないようです。
今では年々増加傾向にあると言われていますが、原因の1つには、仕事や対人関係によるストレスはもちろん、欧米と同じような高カロリー高脂質の食生活へ変化したことが指摘されているようです。 ただし、脂肪の摂取と乳がん再発のエビデンスは、はっきりとは認められていません。
安心してステーキや焼肉をがっつり食べたいところですが、脂肪を多く摂取しすぎて肥満になると、再発リスクが高くなるという報告があります。
ご存知の通り、乳がんは女性ホルモンの1つであるエストロゲンの影響を受けて進行するタイプが多く、だいたい8割を占めると言われています。卵巣から分泌されるエストロゲンですが、実は脂肪組織からも作られているので、脂肪量が多いとそれだけエストロゲンの量が増えてしまうため、乳がんリスクが高くなると現在は考えられているようです。 閉経後は特に再発リスクが大きく違ってくるとも。
また体重の増加は、乳がんの死亡リスクを増加させるという報告もあるので、ますます脂肪=肥満コントロールと乳がん発生の関係性を真剣に考える必要が出てきます。
今は様々なダイエット食品がありますが、無理をして痩せてもまた健康に良くないのはよく知られた話。
リバウンドを考えると、無茶な食事制限や何かを食べ続けるダイエットは避けたいものです。あくまでもバランスのよい食事を通して必要な栄養を摂取しながら健康的な体重を保ちたいところです。
何かに偏らないバランスの良い食事と、毎日軽い運動を行うこと。体重のコントロールには欠かせないところですが、毎日適度な運動をしている人は、しない人に比べて、乳がんリスクが1/3に減少するというデータもあります。
また、運動は閉経後の女性のホルモン治療中の関節痛や筋肉痛の予防・改善に効果があるということも判明しています。気分転換にもなりますし、生活の中に取り入れていけば、体重の急激な増減を自然に避けられ、程よく健康的な体重の維持に繋がるでしょう。
では、どんな運動が良いかというと、1日に何キロも歩いてその後1週間何もしないというものではなく、汗ばむ程度の運動量を毎日取り入れることが大事です。
汗ばむ程度の運動とは、人と会話を楽しみながらできる程度の運動です。息が切れたり、脈拍が急上昇するような運動では長続きは難しそう。 まずは、手軽に始められるウォーキングなどをできれば1時間~30分程度でも毎日続けてみるのがおすすめです。ウォーキング中に見つけた素敵な景色をダイアリーにアップしたり、ウォーキングシューズや専用のウェアを揃えれば、モチベーションもアップするかもしれません!
適度な運動は再発リスクの低下にもつながり、ストレス軽減にもなるので、一挙両得。無理なくバランスの良い食事と、毎日の適度な運動で、快適な日々を手に入れましょう。
参考文献:山内 英子 「乳がん (よくわかる最新医学)」 主婦の友社
文:ピアリング編集部
監修:鈴木瞳 一宮西病院 乳腺外科